九年母の木

抱卵のツバメの番睦まじく
蒸籠の湯気噴き上げて柏餅
慰霊祭愛の詩届けつつじ添う
水溜り天も地もあるかとの国
不揃いの柏餅にも母の味
山間に緞帳のように藤の花
生命の化石の里や若葉風
柏餅羽釜の火たきし祖母想う
過去帳の横に供ゆる柏餅
母の手の温もりありし柏餅
餅見えぬほど広き葉や柏餅
退職の恩師に送る新茶かな
百歳を生きて病室バラの花
柏餅作り終えたる掌の火照り
風吹けば小梅音して降りにけり
濃淡の山々清し老いの会
訪ねたしふんわり牡丹咲きし寺
かとの世もいちびり居るか群れ乱し
母の手の皺思い出す柏餅
薫風やうたた寝している厠にも

第二九三回
大沢句会
      令和五年十一月二日
兼題「初霜」「当季雑詠」
 
高田?先生 句

初霜や犬小屋の屋根白き朝
初霜の庭を隅から掃きにけり
初霜をカツカツ急ぐハイヒール
初霜や猟師の銃声轟ぬ
冬近し薪積み上げし登り窯
 会員句
初霜や生みたて卵手に包む
初霜や烏賊墨黒き朝の市
初霜や初出勤の足の跡

朝餉には漬菜の色を戴きぬ
菊日和門出の笑顔嫁御料
鈴なりの柚子が色付く納屋の口
秋投下開演を待つサキソフォン
初霜の日の射すまでの白さかな
図書館の静けさが好き文化の日
一筋の煙上りて秋の暮
黄色菊活けて仏間の明るさよ
冬の月厨窓より仰ぎけり
三恵子
純 子
弘 枝

三恵子
三恵子
三恵子
純 子
純 子
純 子
弘 枝
弘 枝
弘 枝
二九四回 大沢句会ご案内
大沢地域福祉センター会議室
令和五年十二月七日(木)一時三十分
兼題「ポインセチア」「当季雑詠」