九年母の木

抱卵のツバメの番睦まじく
蒸籠の湯気噴き上げて柏餅
慰霊祭愛の詩届けつつじ添う
水溜り天も地もあるかとの国
不揃いの柏餅にも母の味
山間に緞帳のように藤の花
生命の化石の里や若葉風
柏餅羽釜の火たきし祖母想う
過去帳の横に供ゆる柏餅
母の手の温もりありし柏餅
餅見えぬほど広き葉や柏餅
退職の恩師に送る新茶かな
百歳を生きて病室バラの花
柏餅作り終えたる掌の火照り
風吹けば小梅音して降りにけり
濃淡の山々清し老いの会
訪ねたしふんわり牡丹咲きし寺
かとの世もいちびり居るか群れ乱し
母の手の皺思い出す柏餅
薫風やうたた寝している厠にも

光山寺だより  掲載
 七月号大沢句会
句会
句会

大沢句会

三恵子
三恵子

純 子
純 子

弘 枝
弘 枝
熱き茶をすすれば山に時鳥
豆飯や父の好みにの塩加減

神戸港ドラと汽笛の海霧の中
水が水かさ増し移る蛙の背

通院も老ひの仕事や梅雨に入る
老鶯の声心地よき朝散歩