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 投稿日 平成21年10月25日

     
「メタボにサヨナラだ」                あわて床屋

  
最近プールで歩いている、水中ウォーキングだ。
 インストラクターの女性はスタイルが良く若くて美人、よって男性陣は特に頑張る。
 私も水中で腕や足で思い切り水を掻く、アラ還には少しハードだが後で気持ちが良い。
 この教室にこられたのはメタボリックのお陰である。

  私の住んでいる市では国保の健診の結果、メタボリックのお墨付きを貰った六十歳代の人に
 この特典がある。それと保健師さんが半年間で数回健康のための指導をしてくれる。
 どちらも病気になって医療費を使わせない為の対策だろう。
 万歩計も貸して貰う。高価だと聞き、「これ保険に入っていますか?」と口走る自分が情けない。

  その万歩計を付けて大型スーパーまで夜ウォーキングをする。その一階に本屋があり、
 時々買う週刊誌が最近レジの前に置いてある。
 しかしその日は以前の雑誌コーナーにあった。レジで支払いの際「いつもここにあるのにね。
 向こうにあると立ち読みでぼろぼろにされるよ」と言うとレジ係の娘さんは
 「お兄さんのように買ってくれたら良いですのにね」と笑う。

  待たせていた妻に「早速効果が表れたよ。 レジの娘に、お兄さんと言われたわ」
 気を良くしていると妻は「おじいさんと言ったのと違うの?」と言う。
  待てよ「おにいさん」と「おじいさん」は近い。でもそんなはずは無い。
 確かにお兄さんと言った。 妻はきっと面白くないのだ。
 もっと痩せて若くなって、そしてメタボにサヨナラだ。


 投稿日 平成20年8月31日

     「若き日のお客様」                      あわて床屋

 三十数年前、まだ親元の理容所で働いていた時のお客様で、近所の大きな鉄工所
 の中で業界紙の編集長をされている四十半ばの人がいた。
 洗髪後顔を洗って頂いて、拭いてもらったタオルをその方の左肩に無雑作に掛けて
 後ろに下がった。するとそのタオルをご自分で両肩に置きなおされた。
 その凛とした後姿にプライドの高さを感じ、自分の軽率さを反省した。

 そのお客様は来店のたびに色々なお話をされた。
 「日本古来の草花が外来種のセイダカアワダチソウなどによって
 数が減ってきている。それは欧米の文化がどんどん入って来て自国の良さが
 失われていく今の日本そのものだ。」とか
 「戦時中、学徒出陣に行く前日に、心のより所を求めて浄瑠璃寺を訪れた。
 その際、吉祥天女像の唇の紅色に触発されて、当時まだあった赤線に帰り立ち寄った。」
 と言う話など。
 軍部が支配した国の統制下にあった日本には、出版物や各種映像などにも
 表現の自由が無い。現代のように、何でもに目にする事が出きる時代では無く、
 清い心を持った青年だったに 違いない。
  仏像の唇の紅色に心を惑わすとか、また今から戦場に行き生死と向き合う人の気持ち
 など、 戦後に生まれ親元で生ぬるい生活を送っていた当時の私には分かるはずも無く
 カルチャーショックだった。
  学生で戦場に駆り出された人の事を思うと、今の若者は幸せだ、
 この平和が永く続くといいなとその時思った。 
 国が平和で、言動の自由、表現の自由がある事はとっても幸せだ。しかし秩序ある自由で
 有りたいとも…。

  そして若かった私は、その人のインテリーさに少し憧れ、物事の見方、考え方の上で
 大きく影響を受けた。

  近年、日本固有の淡水魚が外来魚や環境悪化のため絶滅の心配がメディアで取り
 上げられ、また、世界の平和や安全も陰りを見せる昨今、そのお客様の事が思い出される


 
 投稿日 平成19年7月14日

   
「遺 失 届」                        小 百 合
   スーパーのレジに並んでいて、財布の無いのに気が付きました。
 今考えると手押し車の中に入れてたので、満員の店内で向こうの品物を取ろうとして
 車を離れたすきに盗られたんだと思います。
 定員さんにもお願いしといたんですが、家に帰って娘に交番所に連れって行ってもらって、
 「落とした」?云ったのかな、遺失物届を出す事になりました。
  本当は盗難届と思うんですが、そして係りの方に現金はあまりはいってなかったんです、
 クレジットカード、ポイントカード、それに病院の診察券も何枚か、と云ったんですが、
 何故か現金の事ばかりしつこく聞かれました。
 「六千円とあと小銭がいくらか」と答えると「いくらかでは困ります。」それでは遺失届が
 書けません。五千円札が一枚と千円札が一枚と百円玉は何枚ですか、
 十円玉は、五円玉は?、まるで取り調べを受けてるみたいでした。
  「わかりません、覚えてません」と云ってたんですが、怖い顔をして何度も聞かれるので、
 仕方なく「百円玉が三つと十円玉が五つ」といい加減な事を云ってきました。
 同じ嘘を付くなら「十万円入ってたと」云ったほうがよかったかな、そしたら犯人がびっくりして
 現れたかも・・・。
  それにしてもあの取調べ?方は理解出来ません。今日はたまたま、六千円はいってたと
 覚えていたのが珍しい位です。何百何十何円ときっちり勘定して落とす者がいるでしょうか。
 とにかく警察の遺失届の書き方は不思議です。


 
 投稿日 平成19年5月28日

    「おっちゃん何歳」                 あわて床屋
  先日買い物に行く途中狭い裏道を自転車で走っていたら、前に下校中の児童の一行が
 固まって歩いていた。後ろから追い抜こうとするが2・3人が横に広がっていたので通れない。
 「ごめんね」と声をかけて道を譲ってもらい追い越した。
 すると小学3年生ぐらいのやんちゃそうな男の子が私の自転車に走ってついて来て
 「おっちゃん何歳、おっちゃん何歳」と尋ねてくる。
  自転車を止めてその子供達と相手になるのもわずらわしいし、その様な気分でも無かった。
 どっちみち「おっちゃん若く見えるな」とか「子供いてるの?」とかそれぐらいの事だろうと
 知らんぷりを決めて自転車をそのまま走らせた。
 それでもその男の子は諦めずより早口で「おっちゃん何歳、おっちゃん何歳」と追いかけて聞い
 てくる。私の年齢の事で友達と賭けをしているのだろうか。でも私は黙ってペダルを漕いだ。
  すると、その子は突然後ろにいる友達に大声で「おっちゃん49歳やて」と振り返って
 勝手にそう言った。8歳若く言っている。
 ええ所突きよるなあ50代では無く40代ぎりぎりで差しさわりが無い。
 中々賢い子だ、笑ってしまう。
  今度会ってもまた相手に何かなってやるもんかと心に決め、でも妙に愉快な気持ちになって
 その場を去った。「この調子で頑張りや」と、つぶやきながら。


 
 投稿日 平成18年4月15日
      
     「人 相」                          あわて床屋
  我が家は5人家族でいつも5台以上の自転車がある。皆よく乗るのでしょっちゅうパンク修理が
 必要になり私がいつも直す。チューブの取替えの為最近出来たいつもと違うホームセンタ-に
 買いに出かけた。自転車売り場は別所にあり、一度下見をし妻に頼まれた品物を買い再び
 その売り場に戻った。
  客は誰もいなく私一人だ、チューブも通常の安価な物と、ゴムが1、5倍ある厚手の物とあった。
 今回は下の息子の分で乗り方が荒くよくパンクをさせるので厚手の物を択び買う事にした。
 レジ係は30歳代位の女性で愛想がない。
 品物を渡し「1、5倍の厚さだからちょっとは長持ちするかな」と言った。「まあ普通の物よりかは
 強いんじゃないでしょうか」そう云う何気ない会話を期待した。
  すると「しばらくお待ち下さい」と言って責任者らしき男の人を連れて来た。
 「パンクをする時はどんなチューブでもパンクしますよ、釘を踏んだら一緒ですよ」と言う。
 なにもパンクをしたら責任をとれとも言って無いのに、レジの女性は上司にどう伝えたのか。
 まあ今の時代クレームを付けて賠償金を請求する人もいるので仕方ないかなとも思った。
 でも、しかし、まてよ、そう云う事はそんな人間と思われたのか!人相が悪く見られたと考えた。
 どちらかと云えば人の良さそうに見える顔と思っていたのに・・・・・・。
  人には相性というものがあって、そのレジの女性とはお互い良く思えないのかもしれない。
 そう云えば、レジの前を2回も通ったのに「いらっしゃいませ」を一度も聞いていない!
 色々考えながら家に帰り、妻に事情を説明し、変な人に見えるか?と聞くと大笑いされた。
 「良い暮らし方が良い顔を作る」と誰かが言っていたのを思い出し、取りあえず反省する事にした。



「やすみ休み」にもエッセーが載ってます


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