エ ッ セ ー
産経新聞の「夕焼けエッセー」に掲載された分
平成26年2月3日掲載
「息子からの贈り物」
「二人で旅行してきぃや」と24歳の息子にのし袋を渡された.。
「こんなにもらっていいの?」。息子は笑っていた
夫は仕事を終えて、夜から車で九州へ行くと言い出した。
私はそんな遠い所にしなくてもと言ったが「今しか車で九州には
行けない」と言って聞かない。
帰りはフェリーに乗ると息子に言えば、「無理せんときや!」と言う。
「眠くなったらサービスエリヤで仮眠するから大丈夫や」と
夫はガンして譲らない。
息子はむっとして「返してくれるか」と袋を持って行った。
せっかく結婚35周年のお祝いをしようとしてくれていたのに・・・。
数日して、息子から”寿”と印刷された豪華なのし袋を渡された。
中身は倍になっていた。「これで往復フェリーにしたら」と言ってくれた。
さっそく、夫はパソコンの前に座り格安のホテルや往復カーフェリーの
特等室を利用した半額で行けるプランを見つけた。
これには息子も満足してくれた。フェリーで2泊して、熊本と指宿に
泊り700㌔を走った。
12月半ばなのに紅葉も残っていて、夫はいつものようにカメラで写し
まくり千枚を超えた。
息子には大阪では買えない鹿児島の酒蔵の芋焼酎をお土産にした。
10年前に銀婚旅行に行かせてくれた息子が社会人1年目でまた、
プレゼントをしてくれた。
思い出がいっぱい詰まった九州旅行になった。 ありがとう。
平成16年1月15日掲載
令和6年6月13日
「早起きは三文の徳」
時計のアラーム音で目が覚める。今は午前三時過ぎ、外は真っ暗だ。
朝食は米飯をしっかり取り急いで身支度を済ませ家を出る。
清掃の仕事に就いて六年半が立つ。早朝は空気が澄み切り四季の移ろいを肌
で感じながら近くの職場へと自転車のペダルを踏む。気持ちの良いひとときだ。
仕事は部屋とフロアでの清掃で、まず高層階から始める。初日、高層ビル群の
航空障害灯の赤い光が点灯して連なり目を引いた。
夜が白々と明けるごとに景色がはっきりと見えてくる。眼下の街並みから四方の
遠くの山々も見渡すことができる。あべのハルカスと南港のコスモタワーは
印象的だ。夜型だった私には体験できなっかた光景だった。
難儀するのはカーペットに付いた靴跡を掃除機とモップで取ることだ。まだ
空調が効いていない中での作業は五月くらいから汗が出る。目に入るのを防ぐ
ため手拭で作ったヘアバンドでカバーしている。
昨年から携帯の扇風機を首から掛け、熱中症にも気を付けながら水分補強は
欠かせない。眺望の良い所での作業は疲れも癒してくれる。
帰りは朝日がまぶしい。健康的ですがすがしく働けることに感謝し て、
早朝の清掃の仕事も悪くないなあと思う。
令和7年2月2日
「我が家の節分の日」
節分の日が近づくと「恵方巻」の文字を目にする。面が付いている福豆を準備し
巻きずしの材料を買いそろえる。
当日は夫婦で家族11本の護摩木を持って神社に参拝する。
この日の夕飯の献立は巻きずし、鰯の塩焼き、お吸い物と結婚以来ずっと同じだ。
家族全員が恵方に向いて無言で巻きずしを一本丸かぶりで食べている光景はいつ
見てもいいものだ。
ある時、家族の健康を願いながら食べていたら先に食べ終わった長男が
「寿司が大きいから食べるのに時間がかかるわ」と言った。
食べ終わっていない私は返事ができない。
長男が言うのも解る。海苔を半分にして巻けば良いかもしれないが私は板海苔一枚で
巻くのにこだわりたい。
食事の後は豆まきをする。子供たちは鬼役はお父さんがしてと言って、鬼の面に容赦なく
豆をまき、ベランダに追いやる。部屋中に散らばった豆を拾い年齢の数を数えながら食べる。
現在は節分の日には必ず帰ってくる独身の末っ子と3人でルーティンをこなしている。
年々、豆を数えながら自分の年齢を実感させられる。夫に「節分以外でも巻き寿司を
作ってや」と言われる。
市販の恵方巻を買う日はまだまだ先になりそうだ。