エピローグ







明日のことは自分で決められる
だけど、未来は決められている
夢というのを見れはしない
いつ死ぬかも決められて
それでも俺はまだ歩いている


































セシルが出てきたところは神殿の祭壇のようが、それよりも目の前にリーザがたたずんでいる。
空間のトンネルを通り抜けたらリーザがいたことにセシルは多少驚いたようだ。

「兄様、早かったですね。」

「まあな。」

後始末というものをことごとく置き去りにしてきたのだから当然といえる。
しかし、セシルの主観では世界を守るという義務を果たしたのだからゼーレという世界随一の組織が無くなって世界経済が破滅的なことになっていようと歯止めが無くなりあちらこちらで戦争が起きていようとあとはその世界の人間がすることなのだから関係ないということになる。

「この世界の状況は?」

「闇に帰すものが世界を食べています。」

「闇に帰すものと戦わないといけないのか。」

セシルがやや沈んだ表情を見せるとリーザは心配そうな顔をする。

「勝つ自信が無いのですか?」

「いや、闇に帰すものは同じ考えを持つものとして基本的に好きなんだ。だからその同胞ともいうべき存在を倒さなければならないことが悲しい。」

「世界は原世に帰すべき。というのが兄様のお考えでしたね。」

「まあな、でも混沌の世界そのものがそれを望んでいないんだから仕方ない。」

いくつも存在する世界も根源では同じ世界。
その根源たるもの、まさに世界そのものといえる存在。
セシルはその存在を全ての帰る場所という意味を込めて母様と呼んでいる。
兄妹で話し込んでいたら戦士らしき茶髪の人物が祭壇があるこの部屋に入ってきた。

「リーザ様、祈りの時間はとうに過ぎているから、休んだほうがいいぞ・・・・・・・お前は誰だ!」

戦士らしき青年はセシルを見るなり慣れた体捌きで剣を抜く。
セシルは傍から見ると確かに暴漢に見えないということもない。
連戦をしたせいで服はボロボロになっているし、鞘に入っていない剣(アーク)を持っている。

「お前こそ誰だよ。」

表情がないわけではないが希薄なセシルの表情の変化は、初対面の相手には無表情で冷たい印象を与えることが多い。
この青年も例外ではなく、背筋をぞくっと震えさせる。

「お止めなさいデーテ。」

「し、しかし!」

「デーテ。」

[・・・・・・・・・・・・・・・・・」

リーザの命令に青年は敵意を隠さないまでも、すぐに攻撃しようという雰囲気は無くなった。

「失礼しました。」

「リーザが誤ることじゃない。」

リーザの謝罪をセシルは軽く流す。
本当に気にしてはいない。
セシルは基本的には自分の行動とリーザのことしか興味は無い。
セシル自身、なじられることには慣れてしまってもいた。

「リーザ様、こいつ・・・このかたは?」

どうもこのデーテという青年は敬語が苦手らしい。

「救世主様です。」

「リーザ様が救世主です。」

この会話でセシルはこの世界でのリーザの立場をなんとなく理解した。
そしてこの青年がリーザに惹かれていることも心の匂いでわかる。

「直接救ってくださるかたです。」

「こいつが言うようにリーザが救世主で良い。俺はそういうのは気乗りしない。」

「駄目です!」

セシルのその場しのぎの言葉を一刀両断にするリーザ。

「いつも嫌われ役をしていてはいけません!兄様は世界を救うのですよ!感謝されて当然です!」

勢い込むリーザ、それを見て嫉妬しているデーテ、なぜ怒られているのか見当もつかないセシル。
なかなか興味深い図式が出来上がっていたりしている。

「そんなことよりも!リーザ様、お休みになってください。」

「そうですね、兄様もお疲れでしょう?ゆっくり休んでくださいね。」

「倒しに行かなくて良いのか?」

「早目に来てくださったので余裕があるのです。まずは身体を休めてください。決戦の日まで。」

「わかった。」

「準備はさせてあるから早めにこいよ。」

デーテはそういってなぜか部屋を出て行く。

「リーザも大変だな。」

セシルは困ったように苦笑を漏らす。

「本当にですよ。」

こちらも苦笑しているようだ。

「好みじゃないんですよね。」

「そういえばリーザの好みに合った人間って見たことがないな。」

「・・・・・・・当たり前です。」

「は?なぜ?」

「・・・・・・知りません!」

リーザが赤くなって怒っているのにセシルは頭にハテナマークを浮かべている。
心の匂いが嗅げるくせになぜか妹の気持ちには真剣に気づかない。

「本当にソウルイーターの力を持っているのか疑いたくなります。」

「ソウルイーターの素質があるのはわかっていることだろう?」

「知っています!だから不思議に思っているんじゃないですか!」

「何怒ってるんだ?」

「知りません!!」

そうしてリーザとセシルは準備が出来てあるという安らぎの場所へ向かって祭壇がある部屋を出た。
セシルの戦いは終わらない。
シンジであった時のこともこれからの人生も全てを背負って生きていく。
罪を背負ったまま、世界を救うために、自分を削って、戦っていく。
これからも先の見えない未来に向かっていく。





































人には無限に広がる世界がある
人には決められていない未来がある
人は夢という目標で歩くことができる
人は努力で夢へ飛ぶことが出来る
人には予想でもできない可能性がある
人はそれぞれ歩いていく
この物語の彼 彼女らも
そしてあなたも
未来に幸、多からんことを
心から



Fin























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