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マギのベータベースを検索できる権利をもらったけど、行使できるのは事後処理が終わってかららしい。
そのへんはどうでもいい、調べることといっても急ぐことはないし。
でも、なぜ一般人にそんな権利を与えたんだろう?
エヴァンゲリオンに乗ることとデータ・・・・・データのほうが貴重では?
まあ、死んでしまったらデータも意味が無いわけだからあながち間違いではないかもしれないけど。

「ふん!!」

ブン!
振るう剣に体が振り回される。
7kもの重量を両腕で支えられる程度の力はあるけど、慣性になれてないから・・・・I-ブレインに頼りきりではあまり強くはなれない。
強くならなくてはいけないという事態ではないけど、強くなっていて損は無い。
剣を振るいながら今日の出来事を思い返していたが、それでは訓練になっていないようだ。
集中しなくちゃ。
その後、腕が上がらなくなるまで剣を振った。




「痛いよぉ〜〜〜〜」

極度の筋肉痛。
まあ、ここのところ無茶な訓練したから当たり前だけど、学校の体育がサッカーなんて・・・・・
まともに走れない僕はキーパーにされたけど、キーパーの役割も果たせなかった。

「ホンマせんせはスポーツ苦手やの。」

ほっといてよ。

「得手不得手があっての人間でしょ、完璧な人間なんていたら気持ち悪いだけだよ。」

完璧の定義の仕方で意味合いもかわってくるんだけどね。

「碇はエヴァの操縦に長けていれば重宝されるからいいじゃないか?」

「僕はパイロットじゃないから重宝されても困るんだけどね。」

ほんと、今度依頼きたら断りきってみるか。

「でも、結局乗ってるんだろ?」

ぐは

「そうなんだよね、今度はちゃんと断るよ。」

「乗りたくないのか?」

「気乗りしないね。」

報酬が破格だから僕も利益を受けてるけど、命をかけて手に入れるものでもないと思うし。

「ホンマけったいなやっちゃな、エヴァのパイロットってのは変人をあつめとんのちゃうか?」

エヴァのパイロットじゃないから僕は含まれないんだよね?

「エヴァは適格者じゃないと動かせないんだよね?だったら、エヴァは変人が好み?」

ふむ、説得力があるな。

「せやったらケンスケも乗れるんとちゃうか?』

ごもっとも。

「俺は乗れたら御の字だよ。なあ、碇から推薦しといてくれないか?」

「機会があったらいいよ。」

言うだけならただし。

「やった!約束だぞ。」

「「「ええ〜〜〜〜〜???」」」

後ろから女子の声がした。
レイを中心に女の子が円を組み喋っていた。
溶解液にやられてダメージのせいか、だいぶ休んでたけど、もう大丈夫みたいだね。

「綾波も変わったよな。」

「昔は話しかけても返事も返ってこうへんかったからな。」

確かに受身だけど、普通に会話しているように見える。
口数は少ないだろうけど。

「まあ、常識があんまり無いからボケ専門かもしれないけど。」

さっきの声もレイが変なことを言ったのだろう。

「そういや、碇と綾波は一緒に住んでたことあったよな?」

「そうだね、一週間ほど訓練で一緒に住んでたことがあったね。」

「訓練ってなにか?使徒っちゅうんを倒す訓練で二人一緒にすまなあかんかったっていうんか?」

そのとおり、結局成果は実ら無かったけどね。

「ネルフって本当に何考えているのかわからないところだからね。」

僕も何を考えているのかわからなかったりするけどね。

「とんでもないとこやの。」

「そうだね。」

「でも、そのころからだよな?綾波が話す様になったのは。」

「そうやな。」

そうなの?僕は良く見てないからわからないや。

「ふ〜〜〜〜ん。」

「ふ〜〜んって、興味なさそやな。」

実際興味ないしね。

「気分によっては興味持ってあげてもいいけどね。」

「そういや、惣流もころころ変わるよな。」

「何が変わるの?」

人の変化には疎いほうではないんだけど、興味ないものは目に映らなかったりするし。

「気分だよ、学校にきたと思ったら死人みたいになっててさ、それが過ぎたら最初のころに戻ってるし。」

「そうやな、ここ最近元気やな。」

トウジがちょっと嬉しそうにして上機嫌でケンスケに同意する。

「停電からあとだよね?停電のときに何かあったのかな?」

アスカが気持ちを持ち直すようなことがあったのかな?
まあ、誰かに悩みを相談でもして解決した結果なんだろうけど。

「碇はあの時一緒に行動してたじゃないか、何か知らないのか?」

「全く心当たりがございません。」

「嘘はあかんぞ。」

「嘘ついてどうするのさ?」

本当に心当たりなんてないよ。
さらに落ち込むようなことならあったけど。

「まあ、そういうことにしといたるわ。」

「そうなんだから仕方ないだろ?それにしても双頭の竜で双竜ってすごい名前だよね。」

わけがわからないっという顔を二人にされた。

「惣流はこう書くんだぜ。」

机に漢字を書くケンスケ。
・・・・・・げ!大間違いしてる!

「勘違いしてたよ、ありがとう。」

「放課後ゲーセンに行かないか?そこでゆっくり話しをきいてやるからさ。」

自分たちの興味だけでしょ。
口下手だから話なんてないよ。

「今日は用事があるからパス。」

マギにアクセスする予定だから。

「そうか、残念。」

「たまにはつきあえや。」

他人とのかかわりは苦手なんだよ。

「あははは、またね。」




専属のオペレーターというのはマヤさんだった。

「どこにアクセスしたらいいのかな?」

「そうだね、まずは碇シンジのデータにアクセスしてください。」

「え?自分のデータを見たいの?」

駄目なことでもあるのかな?

「はい。」

端的に答える。
画面に碇シンジのデータが表示される。
碇シンジ(いかりしんじ)14歳で6月6日生まれ・・・・って!
6月6日生まれだったの?
体にあざもあるし・・・・・・僕って悪魔?
それはおいておいて・・・・やっぱり、サードチルドレンって書いてある。
これだからこの組織は信用をおけないんだよな。
搭乗拒否など、他の組織とのつながりがある可能性もあるっか。
信用してないんだったら依頼してくるなよ。
僕の表情を読んだのかマヤさんは複雑な表情をしている。

「次行きましょうか?セカンドインパクトについてお願いします。」

隕石が落ちたにしては被害が少ないような気がする。
何か裏があると思う。
あ、表示された。
使徒と呼ばれる人型の物体を発見、調査中に謎の爆発。
要所だけを取り出せばこんなものだな。
それにしてもやっぱり時の権力者に真実を書き換えられていたか。

「あとはマヤさんが興味あることにアクセスしていいですよ。僕の知りたいことは終わりですから。僕が頼んだっていうことにしていいですから。」

そういうと僕は席を立つ。

「え?シンジ君?どこ行くの?」

「帰るんです。今日はありがとうございました。」

部屋の外に出ようとしたら葛城さんがいた。

「シンジ君、ちょっといい?」

なんだろう?

「いいですけど。」

別に急いでないから。

「ついてきて。」

無言のまま葛城さんについていく。
葛城さんに続いて部屋に入る。
レイとアスカがいる・・・・・なぜ?

「アスカ、レイ待たせたわね、それじゃあ、説明に入るわね。」

アスカもレイも頷く。
僕はとりあえず椅子に座る。

「今回の使徒は軌道上に存在が確認されました。」

モニターにどこかの地図が映し出される。

「軌道上?」  

アスカが尋ねる。
軌道上って、衛星軌道上って意味かな?

「そうね・・・・地上からの攻撃の方法は無し。」  

「そんなのどうやって倒すのよ。」  

「それは今から説明するわ、当然の話だけど、こっちと同様、むこうだって浮いてるだけじゃぁ、攻撃なんか出来ないわよね。」  

そりゃそうだ。  

「でもすでに、使徒の攻撃は始まっています。」  

ATフィールドによる攻撃か何か?
それとも加電粒子砲?
 
「と言ってもまだ見当違いだけどね。」  

別のモニターの一部を指して葛城さんは言う。  

「使徒は体の一部を分離して直接落下攻撃をしてきています。第一撃はこのあたり。」  

「見当はずれもいいとこですね。」  

僕はボソリと独り言を言う。

「そうね。で、第二撃はあそこ。」  

葛城さんは次のところを指す。  

「誤差修正しているわ。」  

いままで黙っていた赤木さんが説明まってましたとばかりにしゃしゃり出る。  

「このままなら次は狙いが定まるでしょう。おそらく、本体ごとここに来るわね。」

最初のモニターを指さす。  

「マギが予測した使徒の落下範囲はこの程度。」  

表示されているのは街を覆うほどの大きな円。  

「広いわね。」  

アスカが言う。  

「実際にはもっと広いの。ただ、あんまり広範囲はどうせサポートできないし、落下してもネルフが巻き込まれないものについてはこのさい無視しました。」  

自分たちさえ良ければ他の人はどうでもいいだよね。
相変わらずだなあ。
 
「使徒をあなたたちで受けとめてもらいます。」

「え?エヴァの力だけで?」

「そうよ。」

アスカの不満に冷静に対処する葛城さん。

「勝算はどうなのよ!」

「神のみぞ知ると言ったところかしら?」

「これで上手くいったらまさに奇跡ね?」

「奇跡は起こしてこそ価値があるのよ。」

奇跡はまず起こらないから奇跡って呼ぶんですよ。

「すまないけど他に方法が無いのよ。この作戦以外には。」

「作戦と言えるの?これが!」

「ほんと言えないわね、だから嫌なら辞退できるわ。」

・・・・・もしかして僕を乗せるつもりでここに呼んだの?

「では、僕は辞退しますね。」

「言うと思ったわ、けど初号機の修理が終わってなくてエヴァは二体しか出せないの、だから優秀なシンジ君に零号機か弐号機に乗ってもらいたいのよ。」

アスカがすごく不満そうな顔をしているが反論をしない。

「嫌です。」

「どうして?失敗したらどうせ死ぬし、シェルターに入っても死ぬのよ。」

ここで脅迫か、変わってないですね。

「自分の意思で乗りたくなければ乗らないでいいと言ったのはあなたですよ。」

辞退を許可した時点で僕が行使しないとは思ってなかったでしょう?

「わかったわ、でも、安全のために本部にはいてね。」

「冗談でしょ?失敗したら死ぬのは一緒。だったら自分の死に場所くらい自分で決めます。」

そう言い放ちアスカとレイを見る。

「君たちは乗るの?」

「当たり前でしょ。」

アスカは当然というように答えレイは無言で頷く。

「そう、がんばってね。期待してるよ。」

そういい残して僕は部屋を出た。
早く僕の部屋に戻らないとね。





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