北国の街


雪深い北国の街。煙を吐きながらガッタンゴットンと汽車が駅に着く。
この映画は全編背景にこの鉄道が重なり物語を盛り上げている。
高校生もこの汽車で通学、そこには他校とのトラブルなどもあるだろう。

さてドラマはその高校生。舟木、和泉、山内が個性をフルに生かして
見る人の心を掴んでいく。運命の違う三人が織りなす青春ドラマ!!





            名残が燃える 心が残る
            ふたりで帰る アカシヤの道
            今夜だけでも そばにいて
            眺めていたい ひとつ星
            僕たちだけの 喜びが住む
            北国の街

ちいさな花を 拾った指と ほのかに恥じらい 見上げた顔に たとえ別れが あろうとも 心はいつも 変わらぬと 誓ってくれた 夜更けの恋よ 北国の街
夜風がゆれる 灯りがうるむ 肩寄せ歩く アカシヤの道 ここでさよなら するけれど 明日もいい子で いてほしい 僕たちだけの 幸せがある 北国の街

ストーリー

絹織物の手織り職人を父に持つ1人の高校生・小島海彦(舟木)は、通学の列車の中でいつも見る他校の女学生
・雪子(和泉)にいつしか恋心を抱くようになる。しかし可憐でひときわ目立つ彼女に想いを寄せるのは海彦だけ
ではなかった。同じクラスの札つきの不良・藤田(山内)も、そして別のクラスの前科ある和田もその1人だった。

ある日、帰りのすし詰めのような満員の列車が北国の駅に停車していた。
他人の背中を押しながら乗ろうとしている海彦の後から「すいません私も乗せて下さい」と雪子が駆けて来る。
海彦は側にいる雪子に当惑しながらも「早くしないと乗り遅れますよ」と声をかけ自分の前に入れて雪子の背中
を押してやる。汽車は溢れそうな人々を乗せてゆっくり動き出す・・・
途中、海彦の帽子が風で飛ばされ、自分の所為だと思った雪子と一緒に次の駅で降りる事になる。
線路を黙って歩く二人、お互い何か話しかけたいと思いながら・・・

次の汽車も行ってしまって、待つ間にすっかり日が暮れ、どちらからともなくお互いの事を話していた。
列車の中でいつも本を開いて受験に備えていることもそっと知っていた。そして東京の大学へ行く事も。
「じゃ、合格すれば東京でも会えますね」 この日をきっかけに二人の心はしっかりと結ばれて行く。



♪  いつも電車に 乗ってくる

  赤いマフラーの おさげ髪

北風つめたい 駅だった


 なにも言わずに 歩く道

  枯木ばかりの 並木道

  それでも楽しい 道だった

  ・・・♪♪


ところがその事を知った和田が黙っている筈もなく、海彦に雪子から手を引くように再三せまる。そして舎弟
と称する者を使って暴力を振るう。しかし海彦も一歩も譲らない。黙って、殴られても相手にしない。海彦と同じ
クラスの藤田にしてみれば海彦は自分の舎弟だ(迷惑な話だが)。和田との一件を見過ごす事はできない。
ただ藤田も雪子に心を寄せている1人で何とも複雑で辛い立場にある。

藤田「そんなに好きなのか・・・」

海彦「ああ、この学校の・・いやこの街のすべての人に言いふらされてもいいぐらい好きだ!」

藤田「・・・そうか ・・・和田の事は俺に任せろ」

海彦「放っといてくれ! どうしてぼくの事をそんなにかまうんだ!」

舎弟と思ってる者に拒否されて藤田も腹を立てるが、海彦の心の強さそして男らしさが好きだった。

藤田「・・・わかった ・・・うまくやれよ」



海彦と雪子の恋物語にはまだ大きな障害が立ち塞がっていた。重い白血病が雪子を蝕んでいたのだった。
長く生きても6年、打ちあけようと何度も思いながら雪子は、今の幸せを失う事が恐かった・・・

”雪子は悪い子。いつかは海彦さんを苦しめる事が分かっていても、どうしても打ちあけられません・・・”

雪子をどうしても自分の物にしたい和田は、事あるごとに海彦に暴力を振るい雪子との仲を裂こうとする。
しかしその都度、陰でかばってくれていたのが藤田だった。
海彦もそういう藤田の、番長と粋がっていても真は心優しく情の篤いところが憎めず心開いていくのだった。

ある日海彦は雪子に、藤田を友達として紹介する。「よろしく・・・」 そして三人で一緒に帰ろうと藤田を
誘うが「ちょっと用事が・・・」と断られる。
藤田は嬉しかったのだ。今まで腕力の強さで寄ってくる舎弟はいても、心の通じ合う本当の友達はいなかった。
溢れる喜びをどうしていいか分からず川に小石を投げる藤田・・・

そんな時、海彦の父親が結核で倒れた。医者からは長い闘病生活になると告げられる。海彦は悩む・・・
大学はどうなる・・・雪子は・・・でも父親を放って東京に行く事などできる筈もない・・・



海彦「僕たちはまだ若いんだ。一年や二年遅れたってすぐ取り戻せるよ。
だから君だけでも先に行って待っててほしい。」

でもその言葉は先の短い雪子にとって辛い言葉だった。

雪子「あなたの言う事よく分かるわ。・・・でもそれだったらどうして残れって言ってくれないの?」

海彦「言わないさ。僕たちの愛を確かなものにする為にも色々な経験をして、それでも愛し続けていられるか
どうか試してみたいんだ。」

雪子「・・・・・」

海彦「君は以前、勉強したい。勉強して世の中の事を貪欲に知りたい。そう言ってたね。だからそうする事が一番
いいんだ。君の為にも、・・・僕の為にも・・・
僕たちの愛はそれぐらいの障害が乗越えられないような愛じゃない筈だ。」

雪子「・・・でも私が受験に失敗したら・・・ここに帰って来る事になるわ。」

首を横に振る海彦

海彦「君は受かるさ。僕たちの為にも・・・きっと受かるさ。」



一方、暴力を使ってしか愛を表現できない和田に決闘を申し込まれる藤田。
海彦と固い友情で結ばれた藤田には和田のそうした行動が許せない。神社の境内で一対一の決闘の筈が
和田が約束を破り数人の舎弟を連れて来る。

すべてを告白して雪子と歩く海彦の前に、傷付いた藤田が現れる。びっくりして駆寄る二人
「どうした? 大丈夫か!」藤田は笑いながら言う「やったぜ! これで学校もきれいにならあ・・・」



大学に合格した雪子が東京へ旅立つ日、海彦は藤田と共に自宅で父の友人に機織りを教えてもらっていた。
藤田は海彦に、卒業したら一緒に機織りをやろうと誘われていたのである。
落ち着かない海彦。教わる言葉も上の空で、機織りの手にも力が入らない・・・不信に思う父の友人。「どうした!」

その時遠くで汽笛の音。海彦は立ち上がる。それを見つめる藤田。突然、思い余ったか外へ飛び出す海彦。
父の友人「おい、おい・・・」
藤田「雪子って子がね、東京の大学に受かりましてね・・・」

真っ白な雪の大自然の中を煙を上げて汽車が走ってくる。その線路に向かって海彦も走る。今一度雪子の・・・
海彦の前を汽車が激しく通り過ぎる。「雪子さーーん! 雪子ーーー!」
無情に通り抜け、やがて遠く消えて行く雪子を乗せた汽車。


”今、雪子は独りで東京へ行こうとしています。冷たく白い雪の中にあなたとの愛を埋めて、この北国の街を
去ろうとしています。残り少ない私の命の時間、あなたのお側にいないこれからの毎日、どうして過ごしたらいいか
分かりません。でも・・・これでいいのです。・・・これでいいのです・・・”

北国の雪景色の中にたった独り取り残されたような気持ちで立ち尽くす海彦・・・いつまでもいつまでも、通り過ぎて
行った線路を見つめている。
カメラはゆっくりパーンして北国の白い山々をとらえる・・・

◇雪子の病気を海彦は最後まで知らずに終わったが、もし気づいていたとしたらどうしただろう・・・

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