痛風の患者さんへ


病気の知識
*原因と病状
痛風とは、血液中に尿酸が異常に増え、これが関節に沈着して炎症発作を起こす病気です。痛風は高尿酸血症(7〜8mg/dl以上)がもとになっておこる病気です。尿酸は本来多くなると、ほぼ3分の2が腎臓を通して尿に排泄され、3分の1は消化液として腸管に排泄されます。しかし、何らかの原因で血液中に多くなってくると、本来、尿酸は溶けにくい物質なので結晶化し、これが主として足の親指の関節に沈着し、炎症を起こしてきます。したがって、痛みは多くの場合に、まず足の親指のつけ根の部分に現れてきます。なぜその部分に炎症が起こりやすいのかは不明です。
痛風の予防、治療のカギは高尿酸血症にあることになります。
血液中に尿酸が増える原因は3つあります。
@ 尿酸が異常に多く作られる。
A 尿酸の排泄が悪くなる。
B @とAの混合型。
ところで、尿酸のもとになる物質はプリン体とよばれ、これは細胞の遺伝子である核酸(DNA,RNA)の構成成分です。つまり、細胞があるところには必ずプリン体はあり、組織の密度が濃い食品にはプリン体は多いということになります。尿酸の産生が上昇するのは何らかの原因で体内のプリン体が増加するか、プリン体が分解され尿酸になる割合が増大した場合に起こります。
一方、排泄の低下は、主として腎臓からの排泄が悪くなっておこります。
当初、数年間は、無症状の高尿酸血症がつづきますが、いざ発作が起きると急性におきます。初めは年に1〜2回の発作であったのも、徐々に頻度が増加し、炎症部分も拡大します。

*治療方法
発作時には、まず痛みをとる薬が用いられますが、治療の根本は尿酸の代謝を改善することです。発作がおさまったら高値になった尿酸値を尿酸生成阻害剤などで抑えます。ところが、これらは一時的に、かつ早急に尿酸を低下させることが目的で、尿酸の代謝を基本的に改善し、再発を防いでくれるものではありません。高尿酸血症を根本的に治療するには食事療法が最も重要になります。

☆食事療法のすすめ方
@ プリン体の制限:尿酸の材料となるプリン体の摂取量を制限し、1日にプリン体の量を150mg以下とします。プリン体含有量の表によりますと、[C]ランクの食品は控えめに食べ、[D]はできるだけ控え、[E]、[F]は禁止食品ということになります。
A たんぱく質食品を過食しない:卵と牛乳・乳製品を除き、一般にたんぱく質食品にはプリン体が多く含まれています。また、たんぱく質自体の過剰摂取も、尿酸の産生を増大させます。1日のたんぱく質の摂取量は60〜70gくらいにします。この量は、決して少ない量ではないのですが、最近では、おかずを中心に取っているので、たんぱく質の摂取量が多すぎる傾向にあります。したがって日ごろからたんぱく質食品の摂取量は、やや控えめにします。つまり、質素な食事にすることです。
B 脂肪と甘い糖を控える:糖質の摂取量が少なく、高脂肪食にするとケトン体が産生され、血液が酸性に傾いてきます。血液が酸性になると、尿酸の排泄は悪くなり、結晶化しやすくなるのです。つまり、病状を悪化させることになります。むしろ、脂肪は控えめにし、糖質が不足しないようにします。ただし、甘い糖である砂糖、果糖は尿酸を上げる作用があるので控えめにします。痛風が美食家に多いのは、美食をしていると高脂肪食を、とる上に、甘いデザートをとるからです。てんぷら、フライなどの揚げ物や油っこい肉や魚は、時々食べるくらいにしておきます。
C エネルギーの適正化:痛風は肥満者に多く見られます。肥満者は、食事全体の摂取量が多いために、プリン体、たんぱく質、脂肪、そしてアルコールなどを過剰に摂取しています。したがって、このような場合は減食し減量すれば、ほとんどのケースでは尿酸値は低下してきます。ところが一方で、極端な低エネルギー食にすると、ケトン体が産生されやすくなり、尿酸の排泄は悪くなります。肥満が合併する場合、男性だと1400〜1800kcal、女性だと1200〜1600kcalのエネルギーで月に1kgぐらいの減量目標をたてるとよいでしょう。この程度だと、ケトン体を産生することもなく、徐々に尿酸を低下させることができます。
D 水分の補給:尿酸を積極的に排泄するために、水分摂取量を増やし、尿量を増大させます。つまり、水で尿酸を流しだそうというわけです。この場合、ジュースや炭酸飲料、砂糖入りのコーヒーや紅茶では甘い糖質が増えるので不適当です。ふつうの水、お茶、砂糖抜きのコーヒーや紅茶などは、たくさん飲むようにしましょう。
E アルコールの禁止:アルコールを取りすぎると酵素による調節が低下し、尿酸の排泄が悪くなります。また、アルコール自体が1gにつき7kcalと高エネルギーで燃焼し、しかも食欲を増大させるので、過食を助長します。できれば禁酒とします。特にビールにはプリン体が多く含まれるので中止します。他のアルコール飲料も飲んだとしても、多くならないように注意してください。

食品のプリン体窒素含有量ランク別分類(mg/100g)
[A] プリン体窒素含有量:0〜25
穀 類:ご飯、パン、うどん、そば、マカロニ、スパゲティ、小麦粉、とうもろこし、クラッカー、玄米、大麦
いも類:ジャガイモ、サツマイモ、片栗粉、サトイモ、くず粉
乳・乳製品:牛乳、チーズ、脱脂乳
卵 類:鶏卵、ウズラ卵
魚肉類:ウインナーソーセージ、さつま揚げ、かまぼこ、ちくわ、数の子、筋子、
野菜類:キャベツ、にんじん、小松菜、トマト、きゅうり、かぶ、なす、かぼちゃ、白菜、大根、ごぼう、えのきだけ
果 物:季節の果物、缶詰類、ジャム、ゼリー、果汁
油脂類:サラダ油、しらしめ油、バター
海藻類:のり、わかめ、コンブ
豆 類:豆乳、そらまめ、豆腐
調味料:酢、塩、しょうゆ、砂糖およびその加工品、蜂蜜、みずあめ
嗜好品:コーヒー、ココア、チョコレート、茶
その他:ゼラチン、肝油、木の実
[B] プリン体窒素含有量:26〜50
魚肉類:こい、まがれい、わかさぎ、うなぎ、はまぐり、たらばがに、まぐろ缶詰、つみれ、豚すね、豚ばら・ロース、牛肩ロース・ヒレ・モモ・すね、牛舌、マトン、ラム、ハム、ベーコン、コンビーフ
豆 類:大納言あずき
野菜類:ほうれん草、カリフラワー
穀 類:そば粉
[C] プリン体窒素含有量:51〜75
魚肉類:まぐろ、いさき、さわら、きす、とびうお、べにます缶詰、まだい、ひらめ、にしん、ぶり、さけ、あゆ、すずき、さんま、どじょう、あさり、やりいか、まだこ、芝えび、ずわいがに、たらこ、豚ヒレ・もも、鶏手羽・モモ・ささみ、サラミソーセージ、鶏皮・砂肝
豆 類:納豆
[D] プリン体窒素含有量:76〜100
魚肉類:かつお、にじます、まいわし、まがき、するめいか、車えび、さんま干物、豚腎臓、牛腎臓、牛心臓
豆 類:大豆
[E] プリン体窒素含有量:101〜125
魚肉類:大正えび、おきあみ、まあじ干物、豚レバー、牛レバー
[F] プリン体窒素含有量:126〜500
魚肉類:まいわし干物、鶏レバー
野菜類:干ししいたけ