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5.ボルト接合 6.繊維を利用するということ 6-2繊維の利用 6-3繊維の利用3
5.ボルト接合
ボルト接合は有効なのでしょうか?
右図(5-1)のようにボルトを使って継手を造ると、
木を引張れば、ボルトは横使いに使う事になります。

ボルトは曲げの力には効きません。
力のある男の人がZボルトを曲げようと力をかけたら曲がります

ボルトを木の接合に使う時
曲げに使えば鉄が曲がるか、
木が裂けるかです。
ボルトを横に使えば、(図5-1・5-2)
ボルトは木の繊維を裂くように働きます。
しかもボルトの径と木のボルト穴の径には差がありますので、
(同じ径では施工上無理です。)
クリアの分、引張られるとボルトは移動します。それが継手のガタとなって現れます。
曲げにボルトを使う接合は、
ボルトの為にも、木の為にもよくありません

この接合の原形は、外国から輸入されたジベルのようです。
木と木の間に、ジベルを挟むことによって(4-22)この接合はボルトの接合ではなくて、木と木の「まさつ接合」になっています
ボルトは単に木と木の離れ止めでしかありません。
見かけは同じに見える接合もその内部では鉄の曲げ接合と、木の摩擦接合とに違うのです。
輸入した技術を取入れる過程でその形だけを真似すれば、見た目は同じでも内容は変わってしもうことも起こります。

それとは違って、伝統木造においても見た目は同じで中身を変えることが出来る継ぎ手があります。

例えば、図5-4は組んでしまえば、見た目は同じに見えますが、「渡りアゴ」と「相欠ぎ」という二種類の継ぎ手です。
梁を組むことにおいて、渡りアゴは構造体を傷めるのを最小限にして、捻れにも対抗するすばらしい組み方なのですが、加工手間がかかるのと、機械加工に向いてないために現在は殆ど見かけません。

加工手間がかかるということは加工代金が高くつくということなのですが、これは今の木造では考慮されません。

もともと坪当たりナンボ?の家の価格の表現は、家の値段ではなくて大工さんの手間賃のことを差したそうです。
家を建てるにあたってどれくらいの手間をかけて構造体を造るかを坪当たりの単価で表現したものが、いつの間にか家全体を指すようになったのです。
まさか塔や寺と長家を同じ手間で作れると考える人はまさかいないとは思いますが、家においても豪邸・本屋・別棟・町家・長家などでの手間は当然違いました。
今はどうでしょうか?
坪当たり150万円の家と、45万の家の骨組みの違いを表示出来る家はありません(当然設備に違いはあります。)
えらく脱線してしまいました。話をボルトにもどしまして
ではボルト接合はダメなのかと言うと、そうではなくて、「曲げ」に使うからダメなのであって、引っぱりに使えば引っぱりに弱い木の接合を助け、鉄の能力を活かすことが出来ます。
6 繊維を利用するということ
↓6-1
木造は木の繊維を利用するわけですから、当然ボルトで接合する時も繊維を利用します。
利用しなけばなりません。
そして、鉄は引張りに使うことが原則です。
ですから
「ボルトの向きは力の方向と同じでなければなりません。」
このボルトと力の向きを一致させた継手の一つに「壷堀」という方法があります。
(この方法がいつからあったのかは知りませんが、戦前の関西で使われていたのは確かです。)
壺掘でボルト直締めした場合と、羽子板ボルトで補強した場合の違いを右図6-1に示します。

6-6図は壺彫の時の力の向きを表した図です。
ボルトを引けば座金が木の小口を引張ります。
これによって木の繊維が突っ張る形で梁が柱に引き寄せられます。
この「壷掘」の欠点は
供回することと、
木瘠せによってボルトがゆるむことがあること
ですが、座金やナットをの良い物がありますので現在の所それで問題はないようです。
6-7図中にもあるように、
羽子板ポルトの使い方はボルトと力の向きが合っていない為にボルトが力を分担しません。
しかも、ボルトを締めれば締める程、
片引きで継手は変型(隙間でる)し、
ボルトが繊維を割くように働く事になります。
とにかく、羽子板などの横ボルトの使い方は木を傷めることはあっても、木の性質を理解し、木を助けて木の耐力の足りない所を補っての継手には全くなっていないのです。しかも鉄の利点も利用出来ていません。
くりかえしますが、
木はつっぱり・鉄はひっぱりです。
また、「壺掘り」でボルトで継がなくても、「栓」を使えば充分な耐力を出せます。図6-2
「栓」は、15ミリ角が標準寸法です。たとえ15ミリであっても繊維に直角に力をかけるので繊維を裂きません。

しかも(図6-3)、柱の穴と横物の穴はずらして穴をあけてあります。

そこへ弾力のある樫材の栓を通すと木は曲がりながら入っていき、
その中で戻ろうとするため、
ずっと(長期に渡って)木にストレスをかけて引き付けることのできる素晴しい方法です。

壷掘りのように木痩せによるボルトの緩みもなく、羽子板ボルトなどで補強するよりずっと力があります。

ところが、
この素晴しい「栓」も現在は形だけの継ぎ手になりつつあります。

なぜなのか…
栓は穴に打ち込む時、 テーパーを利用して、木の繊維を全体に引くように自分も曲がりながら入って行きます。
このテーパーがあるから繊維が潰れないのです。(図6-4左の栓)
「栓」はこのテーパーが命なんですが、
栓の加工に鉛筆削りのような便利な道具が出たために栓の形が変わりました。(図6-4右の栓)
この栓を仮に鉛筆栓と呼びます。

この鉛筆栓を打ち込んでも、栓が繊維を持ち上げ、引くことはありません。
その前に繊維が破壊されて栓は横物を引けません。
鉛筆にけずれた面は丸いため、最初にあたった所は点となります。ですから、ボルトが木の繊維を割くのと同様に鉛筆栓もまた木の繊維を割いてしまうのです。

丸棒の栓と丸い穴の栓もありますが、これも、先程横ボルトでも説明したように、栓が繊維を引く前に、もしくは大きな力がかかった時に木が裂けます。

6-5
6-4
「曲げ」にボルトを使った木の接合でもう一つおかしいのはabcの最小寸法が決まっていないことです。建物と図面によって寸法もバラバラですし、何より鉄より弱い木なのに寸法が小さ過ぎるように思われます。
繊維を利用するために距離が必要です。
木よりも強い鉄でもこのabcの寸法は決まっています。
材料としてそれより弱い木にこの寸法が決まっていないことに疑問をもって下さい。
 6-2繊維の利用例 
例1
昔の建物の桁はたいがい「つの」が延びています
桁を組むためには桁を欠ぐ必要があります(たいてい相欠ぎ)。
桁が耐力を出すためには「つの」が必要で、
「つの」の出が足りない場合、力がかかると桁の外側が欠けてしまいます。(図6-7)
例2
栓はその形も大切ですが、図中1-3-27で示す繊維の距離が必要です。(図6-8)
例3
壺掘りは図1-3-28の距離は最適値が決まっています。
短いと繊維が突っ張らず、長過ぎると座金までの偏芯とボルトの延びの別の問題が出てきます。(図6-9)
6-3 繊維の利用3
以前はなかった伝統の納まりの一例を「3伝統の一を知る」のところで、土台の納まりを述べましたが、
土台の納まりの欠点はそれだけではありません。
足固めをやめて土台の上に柱を載せるとなった時から
建物のを力を地面に逃がすべき柱の役割があいまいになってしまっているのですが、特に隅の柱ではそれができない状況にあります。
(6-11・6-12)</td>
隅の柱は、6-11にあるようにホゾは柱の半分の大きさで土台に入っています。
筋交いが無い場合はいいのですが、建物の隅にはたいてい筋交いが必要となる場合が多いので、そこに筋交いが入ると、6-12図のような原理で隅の柱が建物から外れるという事態が起こるのです。
これは阪神大震災で倒壊した建物によくあった例です。
建物の施工不良だとかの批判もありましたが、私達が見せていただいた物の多くはこのホゾが木の繊維を破って(引き裂いて)飛び出した結果起こった物が多くありました。
それ以外にも土台の納まりには問題があります。
図6-13aが現在一般的に行われている土台の納まりです。
bと比べて下さい。
カマの向きが逆になっているのが分かりますでしょうか?
ちょっとした違いなのですが、aではカマが繊維を引き裂く方向についているのです。
ですから、棟上げの時土台を納める時にカマが土台を引き裂かないように、土台の寸法は長いまま出荷されます。6-14
経験的に短いと繊維が土台を割くことが分かっていながらなぜbの納まりにならないのか?
それは、加工の手間が違うからです。
単純に上から見ただけでも
aでは3回
bでは5回
の差が起こるのです。ちょっとと思われるでしょうが
その加工時間と手間の差を見ていただけることは
今の現場ではありません。
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