1日目
 

 

朝から8時過ぎに大阪を出発した。

母と待ち合わせている、中国自動車道の途中のバス停には予定通りの時間に到着。

父と母が既にバス停で待っていた。

車に大急ぎで母の荷物を積込み、出発しようとすると、この期に及んでもまだ母はくどくど父に出発の挨拶(?)を言おうとしている。

そんなこと、前の晩に言っとけー!心の中で叫びながら口では

「もう行くで〜」と早々に車をスタートさせた。

湯村まではこのまま、落合ジャンクションまで中国自動車道、そこからは米子自動車道で湯原インターチェンジまで高速で一気に行く予定。

父は4時間くらいかかると言っていたが、前日インターネットで調べたところでは大阪からなら3時間くらいらしい。

湯原温泉は湯原インターチェンジからも近い。

母とおしゃべりしながら運転していると、あっという間に湯原に到着、時計を見ると11時すぎだった。やっぱり早いわ〜高速は。

 

 

とりあえず宿泊先をチェックしておこうということで、「輝ノ家」に行ってみた。

チェックインは午後3時なので、当然まだホテルには入れない。

輝ノ家は5階建てのホテルのような外見(しかし玄関は日本旅館風)、かなり古い感じ、そしてチェックインしてわかったのだが、部屋は和風旅館の畳部屋、温泉風呂、露天風呂などがあり、部屋の外でも浴衣・スリッパ履きOKという、何でもありの典型的温泉旅館だった。

ホテルの駐車場に入ってぼんやり玄関を眺めながら、これからの予定を考えていると、どこからかホテルのおじさんがやってきた。

今日宿泊予定だと話すと、

「まだ早いからチェックインできません。」とやっぱり言われた。

「どこか観光するところがありますか?」

一応インターネットで観光するところをいくつかピックアップしてきていたが、とりあえず聞いてみた。

するとおじさんはホテルの中に戻り、何やらパンフレットやらチラシやらを持ってきて

「ここに行かれたらいいですよ〜。いろいろあります。」と言って、「蒜山高原」と書かれたパンフレットを差し出した。

お礼を言ってパンフレットを読むと、蒜山高原にあるのはキャンプ場とスポーツ公園とある。

何考えとるんじゃ、あのオヤジは。

いい年の女と老女(お母さん、ごめんよ〜)の2人連れで、こんなところに行ってどうする?

おじさんの薦めは無視して、自分のプランを実行することにした。

まずは名湯「砂湯」だ。

 

 

砂湯は湯原ダムの下に位置し、入浴は自由ですが、混浴です。

脱衣場も掘立小屋みたいなものが一応男女別になっているけど、男性用に至ってはほとんど囲いもない状態。

そこに行くまではたとえ混浴でも温泉に入ろうと思っていたけど、やっぱり入れなかった。

プロポーション、人にお見せできるようなもんじゃないし・・・もし自慢できるような身体なら、人に無料で見せるのはヤダ。

砂湯の温泉は3つあり、あわせて8人くらいの人が浸かっていました。

若い女の人も1人か2人いました。アベックで来て、彼氏と一緒に入っているツワモノ・・・。

あと女の人は年配のおばあさん。

後は若者とオヤジたち。

もう開放感いっぱいで、みんな素っ裸でも全然平気です。

砂湯はもちろん露天で、一般の道路の傍、ダムからの水が流れる旭川の河岸にあり、決して人目を引かないような場所ではないのです。

いや〜雰囲気に流されるってすごい、何でも出来ちゃう。

わたしと母は、靴下を脱いでズボンを膝上まで捲くり上げ、足を湯に浸けて足湯を楽しみました。

足湯でもすぐぽかぽかになり、気持ちよかった。

わたしたちの隣の温泉では、わたしたちが来たときからずっと、1人のオヤジが湯の中に漂っていて、どうやら少し酒に酔っているらしいのですが、そんなに湯に浸かっていて大丈夫かいな〜と思うほどずっと入っている。

一緒に来たらしいもう1人は湯から上がってヘラヘラしていた。

わたしたちの足が温泉の湯の温かさで痺れた頃、そのオヤジの様子がおかしいことにみんなが気づいた。

半分くらい湯に沈んでいて、ほとんど意識がないようで、男の人たちみんなでそのオヤジを担ぎ上げ、湯から出した。

素っ裸のまま、温泉の岩の上に大の字になっているオヤジ。目のやり場がない。

顔色も悪く、意識も戻らないため、誰かが救急車を呼んだらしく、しばらくするとサイレンを鳴らしながら救急車がやってきた。

「砂湯」の少し手前で車の進入を防ぐために道にフェンスがあるのだが、救急車はそのフェンスを開けてやってきた。

男の人たちは裸のままで、道に止まっている救急車まで、救急隊員の人に付き添ってオヤジを運んでいた。

場合が場合だが、全裸で道に何人もの男の人が立っている光景って異様。

そしてさすが温泉場の救急車、オヤジを車に乗せて病院まで急いでいくと思いきや、サイレンは鳴らしていたけど、車が通り過ぎた後、さっき開錠したフェンスの鍵を、またご丁寧に施錠して行った。

あのオヤジ、大丈夫かな〜

 

 

砂湯から上がり、足も気持ちよくなったので、街中のうどん屋で名物の「蒜山(ひるぜん)ソバ」(蒜山高原が近くにある)を食べた。

味は・・・大阪の蕎麦屋のソバの方が美味しいかも。

ソバがかなり太めです。わたしとしては太いソバは許せない。

街中に食堂があまりない。

午後3時くらいにチェックイン・午前10時にチェックアウトする旅館やホテルのシステムでは、その時刻にあわせてやってくる旅人のためにお昼ご飯を提供する店が温泉町で流行るはずもないか。

例によって母は、ソバ屋でも「夜にいっぱい食べるから〜」とお決まりのセリフを言っていた。

次の観光地「古屋の不動滝」を見るべく車を走らせた。

途中で思いがけなく、湯原ダムへ続く道の表示を見つけたので行ってみることに・・・。

車がやっとすれ違えるほどの細い道を車で進んで行くと、思いもかけずダムの上に出来た道に行き着いた。

見学のための駐車のスペースがあったが、霧雨の降る平日のためか、誰もいない。

車を降りて、ダムの上から先ほどまでいた砂湯を眺めたり、ダムの周りの豊な自然を満喫した。

ダムは水量が多く、不謹慎にも、10人くらい沈んでいるかな、なんて考えたりした。

 

 

 

 
湯原ダムの上からの眺め、川岸の奥にあるのが「砂湯」

 

 

思いもかけず穴場を見学できて、いい感じだ。

来た道を引き返し、「古屋の不動滝」に向かった。

ちょっと行き過ぎたが、すぐに道がわかって国道から入った田んぼの中の畦のような道を延々と進む。

車一台の幅の道は、すれ違うことが出来ないので、ところどころ道の脇に車を退避させるスペースが設けられていたが、とにかく全然人がいないので、その必要もなく、ただひたすら進む。田んぼの中を通り抜け、山の上への道を登り続ける。

こんな上に滝なんてあるのかと思った。

ずいぶんと進むと「古屋の不動滝」見学用に駐車場が設けてあった。誰もいない。

車から降りて遊歩道を進んでいくと、ざあざあと水の音が聞こえ、(雨も降っていた)目指す滝に着いた。

滝の水は澄んでいて、とても冷たそう。滝も滝つぼもそれほど大きくなく、見学にはちょうどいい。

滝つぼにはイワナやヤマメ、サンショウウオなどがいるらしい。

釣は禁止。ちぇっ。

滝の傍の岩壁にありがたい神様の姿が彫り込まれていた。

滝を見学して、雨の中を遊歩道を引き返していく途中、滝にお参りするヒキガエルとすれ違った。

 

 
古屋の不動滝

 

 
信心深いヒキガエル

 

 

ダムと滝を見学していたら、ずいぶん時間が過ぎて3時を回っていたが、最後にホテルの近くに見つけた独楽の博物館(湯原民芸工房)に行った。

インターネットで調べたときには、いかにも公営の博物館のイメージだったが、行ってみると独楽を削っていたオヤジがひとり。

木を細工していろいろな木製のおもちゃや独楽をつくって販売していて、その店の横の戸口が博物館に続くようだ。

店では独楽の絵付けも出来るとのことなので、博物館の見学前に独楽の絵付けをやってみた。

白木の独楽に絵の具やサインペンで色を塗っていく。

色を塗り終わった独楽の表面にロウを縫って磨くと、つるつるして売っているような独楽になるらしい。(デザインは別だ。)

お母さんと世間話をしながら独楽を塗っていたら、ずいぶん話が弾んだ。

田舎にはしょっちゅう帰省しているけど、いつも時間がなくてゆっくりおしゃべりすることも少ないので、いろいろ話ができてよかった。

塗った独楽を乾かしている間に、隣の博物館を見学することにして、1人200円を支払って中に入った。

 

ガーーーン!(ショックの音)

嫌な予感違わず、オヤジのコレクション。

たった一部屋のまわりぐるりをガラスの陳列ケースが取り囲み、その中に数え切れないほどの独楽が並んでいる。一応地域別に分けてはあったけど・・・。

でも独楽なんてもんは基本的に形が限られているし、違いといってもすごく違うっていうわけでもない。

だから、ただのオヤジのコレクション。

泣けました。 

 

夕方近くになって、ホテルにチェックイン。

夕食前に温泉でひとっ風呂。

湯殿でもわたしと母の2人だけの世界。誰もいません。

あまりにがらんとしているのでかえって気持ち悪い。

笑えたのは備え付けのシャンプーとかボディソープがバカみたいにいろいろ並んでいたこと。

温泉ではたいがい売店で販売しているシャンプー類が、お試しの意味もあってかそこのお風呂場に備え付けの備品として置いてあることが多いけど、こんなにいっぱい置いてあるところは初めてです。

洗い場のカランの上の棚状のところに、ズラーーーーーーーーーッと、これ以上モノが置けないほど並んでいました。

写真撮ってくれば笑えたのに・・・残念。

安いだけが取り得のツアーなので、食事は全然期待してなかったのに、どうしてどうして〜豪勢なものでした。

あまりの品数の多さにわたしも母も残してしまい、もったいないことをしました。

まだカニの季節ではなかったことが、ちょっと残念。

明日も鳥取まで出かけるので、運転の疲れを取ろうと早く布団に入ったけど、暗闇でないと眠れないわたしと暗闇だと眠れない母との意見の相違で、結局マメ球をつけて寝ることになった。

その上、いち早く寝入ってしまった母の息遣い(ということにしておこう。)が余りにもうるさくて、ほとんど眠れない。

 

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