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伝統芸能は奥深かった…「南京玉すだれ」ボランティア公演に参加
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見事に決まったしだれ桜。森口記者(左から3人目)の努力が実り、
1回目の本番は成功した(左から安野紅峰さん、安野俊丸代表、1人おいて田部野佑丸さん)


 スポーツ報知記者が日本の伝統芸能「南京玉すだれ」に挑戦した。滋賀県野洲市を中心に、年間30回近いボランティア公演を実施している「ほほえみ玉すだれ同好会」の安野俊丸代表(59)=本名・西台俊夫さん=に弟子入り。計3時間の指導を受け、17日に滋賀・希望が丘文化公園で開催されたイベント「希望が丘新緑祭」で“玉すだれデビュー”にこぎつけた。ところが、現実はそう甘くなかったようで…。

「ほほえみ玉すだれ同好会」に弟子入り、3時間の特訓

 前回のボランティア・プロレスで痛めた腰も完治し、今回はがらっと趣向を変えて古典芸能にチャレンジだ。「アさて、アさて―」という軽妙なはやし文句は耳にしたことはあるが、踊りはもちろん未体験。2000年からボランティア公演に取り組む安野代表は「謡(うた)いながら体を動かす。手先も使うし、結構ハードですよ」と、ピシャリ。早くも前途多難だ。
 もっとも、ぶっつけでデビュー戦に挑むほど無謀ではない。安野代表に指導を頼み、練習に取り組んだ。踊りで披露する技は「炭焼き小屋」「阿弥陀(あみだ)如来の後光」など10個。すべてが難しい。特に「旗」を前方に投げて変化させるラストの「しだれ柳」は左手の力をフルに使う。「手が逆」「しっかり左手で持ってください」と過去同様、師匠のダメ出しが続く。足はガクガク、腕はプルプル。安野代表も「声を出しすぎて、ノドが渇きましたわ」と、苦笑いを浮かべていた。
 本番までに2度、計3時間の指導を受けたほか、子供用のミニ玉すだれで自主練習にも取り組んだ。自室の天井に玉すだれをぶつけながら、技はどうにかマスター。歌に合わせると相変わらずついていけないが「簡単に覚えられると、10年もやっているこっちの立場がないですよ」という安野代表の言葉で力も抜けた。当日は夫人の紅峰さん(59)=本名・久子さん=、会員の田部野佑丸さん(72)=本名・田渕祐司さん=からも手ほどきを受け、直前まで練習した。
 そして本番。雨が降り出しそうな天候にもかかわらず、ステージには約30人の観客が集まった。まずは安野代表と紅峰さんが約15分間の「南京玉すだれ 滋賀県バージョン」を踊り「近江八幡水郷巡りの屋形船」や「近江長浜ひょうたんすだれ」など独自の“地元技”を披露。湖南市にかけて、ルーペをかたどった「名探偵コナン」では、子供たちから歓声が上がった。続いて記者の出番。「失敗したら、思い切り笑ってください!」開き直り宣言とともに、ぎごちなく踊り出す。…意外とできる。中盤の「炭焼き小屋」で形を崩したが、すべての技を披露し、完走にこぎつけた。
 終了後は安野代表らとともに玉すだれに興味を持った子供たちを指導。記者が教えた滋賀県湖南市の井野優香ちゃん(8つ)も「楽しかった〜」と、喜んでくれたようだ。デビュー戦を終え、気が緩んだのか「思ったよりできましたね〜」と、ぽろり。調子に乗ったひと言を安野代表は聞き逃さなかった。「せっかくなんでもう一回やりましょう」と、再舞台を要求。嫌な予感がしたが、まさかNOとは言えなかった。
 1時間後の公演2回目。最初の「魚釣りざお」はクリアしたが、いきなり落とし穴にはまった。伸ばしたさおの部分が元に戻らず、必死で直しているうちに歌は次の技へ。リズムを崩して技の順番もど忘れし、早々と“一夜漬け”ぶりを露呈した。「さっきの言葉が生意気だということが分かったでしょう」と、してやったりの安野代表。日本が誇る伝統芸能は、やっぱり奥が深かった。

 余裕と笑顔欲しかった

 
 ほほえみ玉すだれ同好会・安野と俊丸代表「技を作るのに一生懸命で、笑顔やステップに余裕がなかったですね。私たちでも月2回の練習を1年間やって、ようやく曲に合わせてステップが踏めるようになったくらいですから。それでも、仕事というプレッシャーがあったからかもしれませんが、あれだけできた。人前ではやりにくいことを考えれば、よくやってくれたと思います。活動を広めたいし、同好会には私より若い方にも来ていただきたい。きょうみたいに子供たちが興味を持ってくれるとうれしいですね」
 2000年デビュー

 安野代表が「南京玉すだれ」と出合ったのは、今から10年前までさかのぼる。毎年5月上旬に大阪府高槻市内で開催される「こいのぼりフェスタ」に足を運んだ際、南京玉すだれを踊る女性を目撃。当時、自分で披露できそうなパフォーマンスを探していた安野代表は、その女性から高槻市内の教室を紹介され、約1年間にわたる猛練習を敢行。2000年4月、滋賀県野洲町(当時)の「レンゲ祭り」でデビューを果たした。
 当初は本名で活動していたが、96年から芸名に。「安土城の『安』と野洲の『野』から。『やすの』の語呂合わせで、下は本名から一字取りました」在住の滋賀県野洲市を拠点とするが、02年7月には野洲町の交流事業イベントとして米ミシガン州で南京玉すだれを披露。ボランティア公演は247回(09年4月現在)を数える。「私はギャラをもろうてへんから、別に失敗してもかまわない(笑い)」今後もライフワークとして普及に努める。
◆南京玉すだれ

 日本独自の古典芸能で、7世紀に富山県五箇山で祭礼として奉納された「こきりこ踊り」の一つである「編竹踊り」がルーツとされている。江戸時代に演者が口上で申し上げる「唐人阿蘭陀南京無双玉すだれ」を省略したものが由来という。当時、唐人・阿蘭陀・南京は「最新」の代名詞で「ほかにはないもの」という意味が込められたため。玉すだれは長さ1尺1寸(約33・5センチ)の竹を56本使ったもの。歌は7番まで。魚釣りざお、瀬田の唐橋、御門、炭焼き小屋、かごかき、そば屋の看板、阿弥陀如来の後光、帆掛け船、旗、枝垂れ柳と10個の技を踊る。
 月1回練習会会員を募集中

○…安野さんが代表を務める「ほほえみ玉すだれ同好会」(会員数29人)では現在、月1回の練習会を開催している。同会では南京玉すだれに興味のある人を対象に、会員を募集中。
入会金1000円、年間費2000円。問い合わせなどはtoshimaruyasuno@infoseek.jpへ。
今月の練習会は23日に「野洲市コミュニティセンターみかみ」で実施する。
(2009年5月22日13時06分  スポーツ報知)

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