◆ 自然冷媒 ◆


                                                                   

◆ 自然冷媒 ◆

- 代替フロンの次は? -

  

 エアコンや冷蔵庫、冷凍機などには、熱(冷熱)を搬送するために、必ず冷媒が使われます。この冷媒にフロンが使われ温暖の原因となっていることは、新聞紙上などで既にご存じの通りです。

 この冷媒に関しては、フロンが現状最も安全で使いやすい物質であるのですが、本来は自然界にもともと存在する物質を使うのが理想的です。これらには二酸化炭素やアンモニア、空気、水などが考えられますが、総じて「自然冷媒」と呼ばれます。

 三洋電機の1999年9月10日のニュースリリースで、同社はフロンに変わり二酸化炭素を冷媒とした空調用コンプレッサの開発に成功したとの記事がありました。三洋のホームページにはまだ掲載されていないようなので、以下にニュースリリース全文を引用します。自然冷媒などについての説明も掲載されており参考になります。


三洋電機、密閉型CO2冷媒対応コンプレッサを開発

平成11年9月10日     

 

三洋電機では、地球環境・温暖化問題への対応策の一貫として、代替冷媒への取り組みを行っていますが、さらに自然冷媒を採用した次世代冷凍空調機器の開発を重点テーマに取り上げ、この度世界で初めて二酸化炭素(以下CO2)を冷媒とした密閉型コンプレッサを開発しました。

製品名 密閉型圧縮機
圧縮型式 ローリングピストン(ロータリ)・2段圧縮式
冷 媒 二酸化炭素(CO2)
サンプル開始時期 2000年1月(予定)
発売時期 2001年9月(予定) 

■主な特長

1.地球環境・温暖化問題への対応が可能で、可燃性・毒性のない自然冷媒のCO2冷媒に対応

2.高効率、低振動、低騒音かつ高信頼性を確保

3.高温を必要とする高効率給湯機(ヒートポンプ式)に最適

■用途

・給湯機(ヒートポンプ式)
・業務用大型冷凍・冷蔵システム
・カーエアコン(LEV用密閉式) 

■関連出願特許

 国内・外 60件(出願中) 

■その他

学会発表予定
・平成11年度日本冷凍空調学会学術講演会(99年10月18日〜20日)
・日本機械学会関西支部第257回講演会(99年11月6日)

 

1.概要

三洋電機では、冷凍・空調事業として、エアコン等の空調機器から冷凍冷蔵庫等の冷凍機器まで、家庭用だけでなく業務用まで広範囲な事業を行っております。

 地球環境問題は1997年12月のCOP3における京都議定書の採択に代表されるように、オゾン層破壊だけでなく、地球温暖化効果ガスを規制することが決められ、技術革新が求められています。このように冷凍空調事業にかかわる社会情勢は、地球温暖化問題が環境問題としてクローズアップされ、新たな技術開発の必要性が高まっています。

空調機や冷蔵・冷凍機器に使用されている冷媒(CFC、HCFC)は、オゾン層保護の目的からモントリオール議定書に従い、全廃が決定されており、その代替となる新冷媒(HFC)への切替がすすめられています。

 一方、地球温暖化に関してはオゾン破壊係数が0(ゼロ)のHFC冷媒でも千数百の温暖化係数があるため、地球温暖化の観点から、温暖化係数の低い冷媒の開発が注目を浴びています。

 当社ではこの情勢を踏まえ、次世代冷凍・空調機器用としてオゾン破壊係数が0(ゼロ)でかつ地球温暖化係数が1という自然冷媒であるCO2冷媒に対応した冷凍・空調用密閉型コンプレッサを世界で初めて開発しました。

 本コンプレッサのサンプル出荷を2000年1月より開始の予定で、今後CO2冷媒対応コンプレッサ搭載商品の展開を進めていきます。

2.自然冷媒について

 自然冷媒とは、一般的に自然界に存在する物質で、冷凍・空調などの分野で冷媒(作動流体)として活用できる物質の総称です。冷凍・空調用の代表的な自然冷媒としては、ハイドロカーボン(HC:プロパンやイソブタンなど)、アンモニア、空気そしてCO2等が挙げられます。自然冷媒はそれぞれ特性を持つため、自然冷媒を搭載したコンプレッサの搭載商品もその特性にあった様々な用途が考えられます。冷媒特性としては、ハイドロカーボンとアンモニアはエネルギー効率が良いという反面可燃性や毒性の問題があり、空気は超低温域以外はエネルギー効率が劣るなどといった各々の課題があります。

 現在、欧米では地球環境・温暖化対策として、HFC冷媒の代わりに自然界に多く存在するCO2を冷媒として活用することが見直され、主に大型システムや自動車用エアコンを中心に研究が盛んに行われています。

 CO2を冷媒として利用することの歴史は古く、主に船舶用として活用されていました。CO2は、自然冷媒であるだけでなく、可燃性・毒性がなく、経済的な冷媒であることが特徴です。しかし、CO2冷媒は冷凍サイクルに適用した場合、従来エアコン用冷媒比3倍、冷蔵庫用冷媒の5倍という高い動作圧(9MPa:メガパスカル≒90気圧)を必要とするため、高圧下での高効率なコンプレッサの開発が重要な課題となっていました。
 

3.特長

1)地球環境・温暖化問題対応が可能で、自然冷媒の中でも可燃性・毒性のないCO2冷媒に対応

 冷凍・空調用自然冷媒としてのCO2は、可燃性や毒性といった問題はなく、動作圧が高い以外は大きな問題はないという特長を持っています。オゾン破壊係数は0(ゼロ)であり、また地球温暖化係数も1という極めて環境にやさしい特長をもった冷媒です。また、CO2は各種化学合成の副産物として生成されるため経済的な冷媒です。

2)高効率、低振動、低騒音かつ高信頼性を確保

 CO2冷媒は冷凍サイクルに適用した場合、高い動作圧を必要とするため、高圧下での高効率なコンプレッサの開発が重要な課題となっていました。

 今回開発したコンプレッサは従来冷媒の3〜5倍の高圧を必要とするCO2の圧縮を2回に分けて行う方式を採用することで高い動作圧・高圧力差でも高効率、低振動、低騒音かつ高信頼性を確保することができました。

 30数年間蓄積した三洋のロータリコンプレッサ技術をベースに、ACインバータモータを搭載することにより、現行のロータリインバータコンプレッサと同様の広範囲な運転出力(20〜120Hz)が可能となり、高信頼性を確保しました。
 また、従来のロータリコンプレッサ技術を基本としたことで、現製造技術・ラインの活用ができ、量産化が可能です。

3)高温を必要とする高効率給湯機(ヒートポンプ式)に最適

CO2の冷媒としての特長を最大限活かせるのがヒートポンプ式給湯機です。ヒートポンプ式給湯機の原理はエアコンの暖房の原理と同じです。
 ヒートポンプ式の場合、従来冷媒ではその特性上、お湯の温度は60℃が限界でしたが、CO2冷媒を採用することで、90℃まで温度を上げることができ、一層の電力量削減も可能です。

4.用途

・給湯機(ヒートボンプ式)
・業務用大型冷凍・冷蔵システム
・LEV用密閉式カーエアコン 

【参考資料】
◇CO2コンプレッサの応用例 

1.ヒートポンプ式給湯機

 CO2冷媒対応コンプレッサの代表的な利用法であるヒートボンプ式給湯機のシステム・冷媒回路図を右に示します。CO2冷媒を用いたヒートポンプ式給湯機はエアコンの暖房運転と同様に外気から熱を汲み上げ、水を温めるシステムで、加熱用ヒータを用いることなく90℃以上の出湯が可能です。

 また、エネルギー効率も良く60℃の出湯温度の場合、COP(エネルギー消費効率)で4を超え、他の方式の給湯機よりCO2排出量を低減できることも確認されています。 

2.業務用大型冷凍・冷蔵システム

 業務用冷凍システムにおいて、CO2サイクルを二元サイクルの低段側に用いることも検討されています。比較的低圧下で作動でき、サイクル的に高効率が期待できます。

 また、アンモニア・ハイドロカーボンを高温側に用いることにより、自然冷媒のみの冷凍サイクルが可能です。
 

■問い合わせ先■
三洋電機(6764.T)
※発表日 99年9月9日

以 上


このページの記事は下記のHPより転載させていただきました
建築設備Station主宰 野水孝次、克也
(有)ジェーエス設備事務所
(有)野水工務社

http://www.spacelan.ne.jp/~nomizu/readme/index.htm