踏みにじられたのは民主主義、神戸からの報告

98.11.24
 33年ぶりに、降り注ぐ数千の流れ星が見えると言われていた獅子
座流星群は、実は当初の予想の20時間前にピークを迎えていたらし
く、午前4時に家族全員で空をながめていた私たちは、なんや、こん
なもんかとがっかりして寝床に戻らねばならなかった。

 全国各地を点々とし、15年ぶりに神戸に戻ってきた友達と電話で
話した。震災での変わり果てた町の様子に驚いたという話の中で、神
戸地裁の破産課が扱った破産件数が、一年前の1.7倍になっている
ということを聞いた。短大卒のおよそ3分の1、女子大卒のおよそ半
分、大学卒のおよそ3分の2しか10月時点で就職が決まっていない
という。

 神戸空港の是非を求める住民投票が行われ、これまた予想を大きく
上回る30万以上の署名が集まった。そしてごく短い審議の果てに、
こちらは予想通り、議席数の通りに、否決され、またもや「議会制民
主主義」という虚構に深い失望を味わう結果となってしまった。周回
遅れのトップランナーみたいな共産党を除く総与党体制で選挙をして
おいて、民意もくそもあったものではない。あちこち大不況の中、神
戸市役所と神戸市会議員の頭の中では、神戸沖だけは3パーセントか
ら2.5パーセントの間で、今後10年間、経済成長を続けていくら
しい。

 震災で水浸しになったポートアイランドと空港予定地の間にできつ
つある、ポートアイランド二期工事の土地もほとんど売れていないと
いうのだが、いくら神戸空港が2〜3パーセント経済成長率を維持し
続けても、ポートアイランド二期工事の土地の負債がその間に増えて
いくのなら、どうしようもない。

 空港で景気を回復させようとするのは、予測のはずれた空を見上げ
て、数個の流れ星を発見し、それに喜びを見いだそうとしている行為
と似たようなものかもしれない。昨年、白血病で亡くなった家内の父
親の一周忌に行き、土地の人に関空の埋め立てで削り取られた山を見
せてもらった。淡路は橋がかかり、三連休ということもあって、それ
なりの人出だったが、それも車の数を見てそう思うだけで、淡路島そ
のものがどれだけうるおっているのか定かではない。明石海峡大橋を
淡路側から見晴らすパーキングエリアは長蛇の列だが、おそらくそこ
に入った車は、かなりの割合で橋を背景に記念写真を写して、そのま
ま神戸に引き返していくはずだ。

 山から下りると海岸沿いに埋め立て地がひろがっていて、釣り客の
姿が見えるが、この埋め立て地もかつては石油コンビナートができる
だの、橋目当てに、ヨットハーバーやイルカの泳ぐ施設を伴う大リゾ
ート地になるはずだの、いろいろ言われていたが、土地の売却までに
も至らず、バブルの崩壊とともに、あっけなく計画が中断し、海が狭
い通路で閉じ込められ、よどんだだけで終わっている。もともと集客
施設のあった場所は別にして、淡路島で一番客が増えたのは、もしか
したら北淡町にある活断層を保存した震災記念の公園かもしれないと
地元の人が言っていたのは皮肉な話だ。

 笹山神戸市長と金の亡者の市会議員どもが果たした民主主義破壊へ
の貢献ははかりしれないほど大きい。政党と無関係の「市民」が、70
年代以降、はじめて「政治」に向けた関心を完膚無きまでに踏みにじ
ったのだから。近所へのビラ配りを自発的に申し出て、二度にわたり
百枚ほど配ったのだが、私自身、こういう体験をしたのは何十年ぶり
かのことだった。空港問題に関心を持って行動をした多くの人がやはり
そうだったはずなのだ。 へおすすみください。
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