今さら空港はいらない、神戸からの報告


98.9.20 今日が神戸空港の住民投票を求める署名運動の最終日
である。昨日の新聞ですでに20万人分の署名が集まっていると
書いてあった。署名を集めることができる受任者への登録者数だ
けでも2万数千人にのぼっている。署名の目標の30万人(議会
へリコールを請求できる数らしい)にはまだかなり不足している
が、150万都市で20万を越える署名というのは相当なものだ。
しかも、最終日の今日は、市内すべての公立小学校の正門前で署
名の窓口を設置するという。これだけの数の動員がが可能という
のも、驚くべきことである。

 空港反対の署名運動のきっかけは、震災のときにボランティア
に参加した作家田中康夫氏と、かねてより空港問題に意義を唱え
ていた人たちが結びついたことによる。田中氏の小説は愛好しな
いが、今思えば、「なんとなくクリスタル」というカタログ小説
は、ハイパーテキストの形式を活字で先取りしていたという気が
する。震災の時、大阪のホテルに泊まりながら、神戸にバイクで
入り、高級ブランドの下着や化粧品を配ったりしたことを非難す
る人もいるが、気まぐれで来たのではなく、マスコミがオーム報
道にシフトしたあとも神戸に来て、活動を続け、今もそれを持続
しているというのは、希有なことであると評価する。

 神戸空港住民投票の風のホームページ(http://www.sam.hi-ho.ne.jp/snowlandmak/index.htm)
に、田中康夫氏も加わったメイリングリストの過去ログが公開さ
れている。それを読むと、議論するばかりで行動しない(耳が
痛い)若者を叱咤する年長者であるらしい人の声や、署名を集
める際、通行人と署名呼びかけ人とが
敵対関係に落ち入ってしまわないように、
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引用:「署名をもう終わっている人は一声かけて下さい。その一
声が励みになります」と声をかけたり、少し違えて「もう終わっ
ている方は手を振って下さーい」です。何人もが笑顔で小さく手
を振ってくれます。そこで「有り難う、元気が出ます。今署名は
12万5千でーす。もう一息です(ホントはまだまだ)アルガトー
ウ」。これでこちら側の市民とあちら側の市民は見事に一体とな
れるのです。こんなことって今まであったですか! やってみて
下さい。
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 というようなことが報告されたりしている。今週の半ば、その
アイディアの変形で、「×月×日の午前に署名を集めに回ります。
すでにおすみの方、また署名をしたくない方はこの紙を貼りだし
ておいてください。」というビラが入っていたので、運動を指示
するメッセージとすでに署名を終えていると書いて、郵便受けに
貼っておいた。

 これらの過去に例を見ない住民運動を、新社会党など、一部政
党の党勢拡大に利用しているだの、神戸に住んでいない人(田中
氏)が運動の旗振りをしているだのと批判する市会の「一部政党」
以外の会派が街頭に立って、運動を批判したり、空港賛成を唱え
たりする光景もまた異様だ。そして、それら政党を指示する立場
から、労働組合が組合員を動員し、住民運動を批判するビラを配
る光景も、はじめて見るものだった。都市型市民のための政党は
150万都市にも存在しない。

 私は組合への不信から、職場のほぼ全員が組合員である組合を
大分前にやめているが、その組合がどういう立場をとったのか知
らない。職場で署名簿をまわしていたのは、非常勤で職員室の雑
務をするために勤めているおばさんで、組合でなかったのは間違
いない。

新社会党の宣伝カーが「明日、署名運動の最終日です。全市の公
立小学校の正門前で署名を集めます」というようなことをマイク
で流しながら走っているのは確かであるが、ほかの場所で政党色
を感じることはほとんどない。震災ボランティアと呼ばれた人た
ちが、形を変え、手弁当で参加しているのだろう。政党の手足で
頭のないのは、労働組合の方ではないか。

 今日の新聞の一面の見出しは「年金審 老後へ自助努力必要」
である。小見出しには:意見書原案/制度改定なら「生活は困難」
となっている。高齢者人口の増大ばかりを言って、あたかも老人
を悪者扱いする言論がまかり通っているが、経済を破綻させたの
は公共事業中心の行政でなかったのか。神戸空港でも、空港用地
のテナントへの賃料や、空港ができたことによって価値が増す、
ポートアイランド二期工事でできた土地を売って、その利益で市債
を返却するだのという説明をしているが、これらすべてバブルで
終わったはずの発想のままではないのか。

 空港を造ることが雇用を促進するというが、自転車操業みたいな
雇用促進ではどうにもならない。仮設から出られずにいる人たちの
多くは、バブルに踊った金融機関の豊満経営のために、金利が下がり
価値が目減りした「年金」で暮らさなければならない人たちが、多くを
占めている。

 最終日で、まだ受任者の手もとにあり、集計されてない署名を含め
どれだけのものが集まるのか楽しみである。青島幸男のやり方とは
違う方法で、一度決めた公共事業をくつがえすことができるのか、
有権者の半数以上が投票しない選挙による代議員制度と、住民の意志
のギャップが埋められるかどうか、いろいろな意味で楽しみだ。 へおすすみください。
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