「わしには人質がおる さあ、そのドラゴンを大人しくさせろ!」
「フィソラ! ナデシコを守って!」
アイリスがナデシコを持つサンダーバードを指差す。
『なるほど。石化させた後落とすというわけだ。よくも汚い真似を……。ジュエルボックス!」
まるでアブソリュートプロテクションのような金とダイヤの装飾。それらが施された板が6枚フィソラを囲むように浮かぶ。
『行け!』
全ての板が空を舞いはじめた。老人が反応するより早く4枚の板がサンダーバードを囲う。
「周りを囲っても、まだ上も下も在るわい!」
老人の指示に合わせサンダーバードが飛び回った。だが4枚の板は、重力など感じさせない不思議な動きを繰り返し、サンダーバードを逃さなかった。
「もう良い! 貴様等がそのつもりならば砕いてやろう!」
サンダーバードが爪を放す。ナデシコが落下を、しなかった。すぐ下にはいつの間にか豪華な地面。板の裏側は赤く柔らかで、しっかりとナデシコを支えた。そのまま上と下が壁によって塞がれる。
金の装飾、ダイヤの装飾。それらが一面に施されたその箱はジュエルボックス。宝石箱と呼ぶに相応しい。
「これならもうナデシコは大丈夫ね。ありがとう」
全てを覆ってしまえば落とすことなどできない。中のサンダーバードがナデシコを砕く事も無いだろう。
見えないものを自由に操るなど不可能だ。
「あらゆる命の源よ、その力を持って傷を癒したまへ “キュア・バブル”」
傷を負ったギルバートを泡が包み込んだ。
『さあ、決着をつけよう』
フィソラが老人を睨みつける。老人はわなわなと震えていた。
「ふ、ふざけるな!」
アイリスもフィソラも、後ろで呆然としていたギルバートも、老人を冷ややかに見つめる。
「わしは負けん! どのような者を召喚したか知らんが、周りを見てみい!」
魔獣が二人と1匹を囲む。しかもじりじりと距離を縮めていた。
そして魔獣の大半は老人を囲んでいるのだ。どうすれば老人に触れられるだろう。
その状態を再確認し、老人がにたりと笑う。
「どうじゃ! さあ、どうする! これだけの魔獣を全て倒すか!
どうせ殺さずに済ますなど甘い事を考えて居るのじゃろう!そのようなこと不可……」
「できるわよ!」
フィソラがブレスを吐いた。
「え? 麻痺ブレスじゃないの!?」
黄色い麻痺ブレスではない。灰色の煙のようなブレスだ。取り囲む魔獣の一部がそれに包まれる。
『石化ブレスだ。死にはしない』
フィソラの言うとおり触れた魔獣は全て石化していた。
「フィソラ! そのままクソじじいも固めろ!」
散々自分達を苦しめた石化という能力は今、フィソラの能力の一つとなった。ただ捕まえるのでは気が晴れないギルバートが声を張り上げる!
『ああ! お返しだ!』
フィソラが老人を睨んだ。
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