「中央通りに避難するんや! 急いでぇー!」
 住宅街を文字通り飛び回りながらナデシコが叫ぶ。目の前をフィソラが飛び、道を案内している。
 天使と崇める者も、ビーストガーズと知って大人しく従う者も家から飛び出してゆく。 これなら早くアイリスの元に戻れそうだとナデシコは少し安心していた。
 「フィソラ! アイリスの様子はどないや!?」
 『……どうやら私がこちらに専念できるよう感覚を遮断しているようだ。詳しい事は……』
 片方が望めばパートナーとの視覚共有や聴覚の共有は無くなる。アイリス達ドラゴン使いの民族が覚える基礎の一つだ。ナデシコもその事は知っていたので、横に首を振ったフィソラを見て「ほうか」とだけ残念そうに返して再び叫び続けた。
 『そろそろ終わりだ。村人に事情を説明した後アイリスの元に戻るぞ!』
 「……あとどんくらいかかる!? ……返事できんか……」
 ナデシコが着いてくることは間違いなさそうなのでフィソラは村人集まるメインストリートに向かって飛んだ。
 

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