第3章:危機迫る
「あ〜びびったぁー……」
暗い森の中、俺はたった一人で木の根元に座りこんでいる。はっきり言って、緊張した。
フィソラに落とし穴を使った時にふと思いついた作戦は穴だらけで、上手くいったのはほとんど運だ。いつもなら自分を拘束する鎖を斬ったのだが、抜け出すならあの時しかないはずだったからな……。と言っても……
「鎖が緩まなかったら、落ちた所をボコボコだったな……」
声に出すとぞっとする。絶対攻撃できないアイリス、実力は劣るが速さには全く付いていけないナデシコ、ドラゴンのフィソラ。勝てるかアホ!
ていうかあいつら! 普通は大怪我するような攻撃をぽんぽんと! ……人をなんだと思ってやがる!?
いくら頑丈でも普通に痛いもんは痛いんだぜ!?
「絶対あれ壊れてるな……。護身用にワイスンから借りたのにあいつらに使ってどうすんだよ……」
ワイスンからもらった物は「身代わり人形」というのがピッタリのマジックアイテムだ。
使った奴そっくりに巨大化し、与えた任務通りに行動する。俺は三人に大怪我をさせず、できる限り時間を稼ぐよう命じておいた。
まさか、ワイスンも一度で使い物にならなくなるとは思っていないだろう。……弁償か?
それにしても、答えてくれる奴がいないと、思った以上に寂しい。さっさと終わらせてさっさと帰ろ。
「よっこいせ!」
とりあえず適当に歩き回る事にした。大声を張り上げてみようか……いや、確実だろうが別に玉砕覚悟で来た訳じゃない。もし向こうの隙をつければそれが一番だ。
なんかまるで俺が死ぬみたいな流れだったが、そう簡単に死んでたまるか!
唯一生きて帰れそうだから俺が来たんじゃないか。
全員で生きて帰る。絶対だ!
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