3階は武具屋だ。

ここで買った武器の調子を見るためにシュミレーションルームを使う人も多い。

ちなみにこの階は、トレーニングルーム内で唯一渡り廊下がある。

なぜなら……。

「やあギルバート」

武具屋の奥から、ワイスンが姿を見せる。

武具屋の奥の扉は、ワイスンの部署につながっている。だから渡り廊下があるのだ。

ワイスンは人をまとめるのが上手い。だが、そういう人材は他にもいる。

そんな中で、ワイスンが組織のトップ10の座にいる訳、それがこれだ。

優秀な鍛冶屋として、絶対に必要な人員なのである。

ちなみにナデシコのグローブを作ったのもワイスンだ。Wはワイスンブランドのロゴである。

「四属の巫女について何か分かったか?」

「いや、まだだね。私は手一杯だから図書館のほうに依頼を出しておいた。

でも正直駄目だと思うな」

「なんでだ?」

「今まで調べた人がいないんだよ。

図書館だって使わない資料をいつまでも置いておくわけにいかない。使われていない資料は新しい物に交換されるんだ。

ビーストガーズに入る前から毎日本ばっかり、それも難しい物を読んでいた……なんて学者ぐらいじゃないかな」

「簡単な本。おとぎ話に例えているとかは……」

「それなら、ますますここには無いな」

八方塞がりとギルバートが諦めようとして、一つだけ思い浮かんだ。

なんとかなるかも知れない。

「ところで何か買っていくかい?」と言ったワイスンの目が鋭くなった。

商人と職人の目を足して、割らなかった様な目である。

「はっきり言って、君に両刃の剣は向いていない。

剣の腕がいくら凄くても相手を斬りたくないからって剣の腹で叩いていれば、いつかは折れる。

この片刃の剣なんてどうかな?みねうちも出来るけど」

確かにその通りだ。両刃の剣は使いにくい……。ギルバートはその武器に手を伸ばし、

いや待て、それじゃあ駄目だ。と手を引っ込めた。

「武器に頼る前に自分の力を上げないと駄目だ。

いつか折れるんなら長持ちするように気をつければいいんだ!

それなら力加減や手入れなんかも自然に身につくだろ?」

「なるほど、確かに大事に使って欲しいけど………。

一応売らないと儲からないし………、でもやっぱり職人としては………」

ワイスンがかなり悩んでいる。

「必要になったら言うからその時に売る分でも作っておいてくれよ。

言われたとおり、さすがにこのまま使い続けるって訳にはいかないだろうしな。

何より鍛冶屋のワイスンだ。その人に合ったオーダーメイドなら、さぞやものすごい武器が出来るんだろ?」

「能力は私任せでいいのかい?」とようやく落ち着いた様子でワイスンが尋ねる。

「ああ、任せる。ナデシコのだって見立ては確かだったからな。

初任務であれだけ使いこなせればたいしたもんだ。俺にあったのを頼むぜ!」

「分かった。用意しておこう。

けど頼むよ……」

「何をだ?」

「明日『折れたから買いに来たぜ!』、とか言われても用意できないからね」

「そんな訳無いだろ!絶対大丈夫だ!

明後日まではもつ!」

「早いよ!」

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