「ホント悪いな。頼む」
「君が謝らなくていいよ……」と言いながら、ワイスンが書類を取り出す。
一体どの程度の問題になるのだろうか……。
明らかに落ち込んだワイスンを気にしつつ、ギルバートはパートナーであるアイリスの部屋に向かった。
おそらく、さっきの放送を聞いてギルバートが来るのを待っているだろう。
アイリスの部屋はギルバートの部屋の隣なので、彼女の部屋に向かうと、ギルバートの部屋の前を通る。
ギルバートの部屋の前に、呆然と立っている少女がいた。
背はやや低めで、ギルバートの肩ぐらい。
髪は艶やかな栗色。
同じショートカットのナデシコとは違い、サラッとしたストレートが耳にかかっている。
茶色がかった目はパッチリとしていて、まつげも長い。
肌は白く透き通るようで、脚も長くすらりとしている。
そして男を魅了する胸元は……今後に期待しよう。
右手の中指には、パートナードラゴンであるフィソラの召喚具。
ドラゴンを模した指輪を着けている。
ギルバートに気づいて振り向く、その姿だけで妖精と間違ってしまいそうだ。
そして、周りを魅了する妖精がギルバートに走りより、
「これどういう事!?」
ビシッと部屋を指差し、驚いた顔で詰め寄った。
「どうって……リーリアが急に俺の部屋に来て、戸を吹っ飛ばしたんだ」
「リーリアさんが?確かにリーリアさんは変わった人だけど、さすがにそんな事するわけ無いじゃない!」
アイリスが大きな声で怒る。
普通に考えればそうだ。なぜワイスンは信じたんだ?、と不思議に思ったギルバートだが、考えると簡単だった。
アイリスよりワイスンのほうが、リーリアと付き合いが古い。
「本当はどうしたのよ!?こんなのワイスンさんにまで迷惑がかかっちゃうじゃない!」
「本当だって!リーリアの弟子が俺たちと一緒に行くことになったからその挨拶に来たんだ」
「それでどうして、戸を吹き飛ばすのよ!?」
長い空白。
ギルバートが黙って考える。アイリスも答えを待っている。そして、
「……何でだ?」
やっぱり分からなかった。
あえて言うならギルバートが鍵を開けなかったからだが……、それが理由じゃアイリスも納得できない。
「何で、じゃすまないわよ!」
アイリスの入団試験の時、ワイスンの力添えがあった。
ドラゴン使いとはいえ個人でほとんど戦えないアイリスは落ちる恐れもあったが、ワイスンのおかげで何とかなった。
なのでアイリスは、ワイスンに迷惑をかける事を人一倍嫌っている。
「信じられない!
迷惑をかけるだけじゃなく、久しぶりに会った仲間のことを悪く言って、弟子なんて嘘まで用意してるなんて!
納得の行く理由を話して!」
「嘘じゃない!理由はリーリアに聞いてくれ!」
「ん?呼んだ?」
ギルバートの部屋からリーリアが顔を出す。まだいたのか。
「私が出した被害だし、どれぐらいのものか調べるぐらいはしないとね」
「え!じゃあ本当に?」
リーリアを見ていたアイリスが、ギルバートの方を向く。
「だから本当だって言ってるだろ?」
「でも、どうして?」
「……ノリ?」
「ノリで俺の部屋を壊すな!」
アイリスは、ギルバートの隣であっけにとられている。
リーリアは、「ほんとごめんね〜!」と、さっきのように言うのだった
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