「つまりまとめると……。

ナデシコが送れたため一日遅れで森に入り。魔獣に会わないまま一泊。

次の日の朝その異変に気づきとりあえず森の中心の泉に向かうと、催眠術を使う妙な老人が現れたと……。

……この老人と言うのはもっと詳しく聞かせてもらうからね」

「ああ、分かってる」

「その老人がジャングルの動物を操り、戦闘になって怪我を負う。老人は逃走。

回復魔法で傷を癒すために休んだが、大きすぎて副作用が出る。

それでこういった状態に、と言う訳か」

「そうそう」

「……今ひとつ信じにくい話だね……

君を信じないとかそういうことじゃないんだけど……。

ジャングル中の動物を操ったって話が信じられないことなんだよ……」

「そういうアイテムを使ってたんだ。

そんなのいくらでも有るだろ?」

ここは魔法の発達した世界。そんなアイテムは結構有るはずだよな。

無いわけ……。

「無いよ。そんなアイテムは見つけ次第破壊してきたんだ。まだあるとは思えない……。

まして回り全てに影響を与えるなんて極めて高位のアイテムだ。どこからそんな物騒な物を……。

とにかく、上がすんなり信じてくれるとは思えないな」

「何とかならないのか?」

「こればっかりは、言ってみない事にはなんとも……。

本当にこんな老人がいたとしたら、ほおっておく訳にはいかない。

でもガセネタなら動くわけには行かないだろうから、信用せず動いてくれないかもしれない。

何一つ証拠が無いからね、嘘だって言われても仕方ないと思っていて欲しい」

「マジか……」

嘘と言われる。つまりその場合は、俺の信用が無くなる。

ろくな任務が回ってこなくなる、かもしれない。出世コースからも外れる。

あの老人め!胸くそ悪い!

「それで……この老人の話だけど」

「今の変なアイテムを使うムカつく老人、じゃあ駄目なのか?」

「ああ、それだけだとね。

風貌はもちろんだし、話し方とか性格とか。あとは、何か分かってることがあったら」

「ひげは、あごの下で三角形に整えられて、あとは剃られてた。

顔のしわは……深かった。年は80ぐらい」

「随分と年を取ってるね……」

「だよな。話し方は……何ていうか……傲慢って感じの話し方だ。

性格はサディスト。動物が戦うのを見て喜んでた」

「傲慢で、動物が戦うのを楽し……む……?」

ワイスンが黙って、手をあごに当てている。どこかで見た格好……。

ああそうか!考える人にそっくりなんだ!

「どうかしたのか?」

「ああ、いや、なんでもないんだ。

他には何かあるかな?」

「そうだな……」

ワイスンのところに何か情報があったのかもしれない。

とりあえずその辺はワイスンに任せるしかない。俺は俺で情報を、

何か忘れてる気がする。

あ!そうだあれだ!

「アイリスの事を、四属の巫女なんて呼んでたな。調べといてくれないか?」

「……四属の巫女……か。分かったら伝えるよ」

「あと、アイリスがビーストテイマーとか言ってたな。何か分かるか?」

「ビーストテイマー。まだいたのか……。

大昔の戦争では魔獣が優秀な兵器として利用されていたんだけど、そのころに繁栄していた民族なんだ。

ビーストガーズが兵器としての魔獣の扱いを禁止してからは、民族がバラバラになって文化も失われたっていうのが一般の見解だな。

フィソラで気づいているだろうけど、魔獣は大きな力になる。この決まりが無ければ今でも戦争が起こっているかもしれない」

ワイスンの顔はどこか話すのが嫌そうな、言いたくない事実を話すかのような、そんな顔だった。

まあ俺も、戦争の話を平気でする奴についていこうとは思えない。

「それだけ重要な法律を破っているんだから……上が動いてくれたらいいんだけど。

ここだけの話、5人中4人が自分の保身を1番に考えてるから……隠蔽を優先するかもしれないな」

ワイスンがため息をつく。随分と、めんどくさい話になりそうって事だ。

だが、まかせるしかない!

「俺が分かってるのはこれで全部だ。

あと頼みたい事がある」

「ん?なんだい?」

「今すぐに!トレーニングルームを使えないか?」

ワイスンが驚いた顔で俺を見た。

次へ