「神秘なる魔法薬よ 蝕みし物を追い出せ 病を持ちし者に健全なる体を “エリクシール”」
魔法を唱えると目の前のグリフォンを霧が包み込んだ。
呼吸によって霧が体内に取り込まれていく。
霧自体が魔法薬。霧を発生させる魔法は、そういう物が多い。
すぐに効果が表れた。グリフォンは体を起こすとアイリスを見つめ、振り返りながら森に帰っていった。
「……あと、どのくらい?」
言いながら額の汗をぬぐう。
『200か300か………大丈夫か?』
少しはなれたところにいるフィソラが念話で答えた。
「大丈夫。でも、……急がないと……どんどん連れて来て!」
動物をアイリスの近くまで運ぶ。それがフィソラの今の役目だ
次の動物。アイリスがすぐ隣の狐を見ると、ブレスで痺れてじっとしている。
「……すぐ……直してあげるからね」
そう言って神経を集中し始めた。
魔力を一気に使ったせいで一度精神を集中しないと魔法が発動しない。
精神が疲れると肉体も引きずられる。もう限界だった。さっきの大丈夫というのも、嘘だ。
「神秘なる魔法薬よ 蝕みし物を追い出せ 病を持ちし者に健全なる体を “エリクシール”」
霧を吸い込み、狐が動き始める。痺れも催眠も解けたようだ。
ちらちらと振り返りながらゆっくりと森に歩いてゆく。
アイリスが疲れを浮かべながらも微笑み「元気でね!」と声をかけると、
コン!
『ありがとう。だそうだ』
「うん!……ありがとう、か……。フィソラ……」
『どうした?』
「絶対に……みんな助けるわよ!」
そう言って、限界を超えた体で次の動物を見るのであった。
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