正直Aを取って、有頂天になってた。
ドラゴン使いって言うても一つの魔法で倒れるんやったら、正直意味無いて思てた。
「次出して!」
アイリスの声にあわせて、初日に着ていた服を出す。
それを強く押し当て、簡易的な止血。
キュア・バブル守られた空間に手が入るんは術者やから、そんな都合のいい魔法やない。
もともとの魔法を変化させる。しかもそれが発動後の魔法への干渉やなんて……。
どちらも魔法使いの間では不可能というのが常識。どうやったんかも分からんけど、まともやない事ぐらい分かる。
なんでそんなことが出来るんや……どんな代償があるか……。
それでもアイリスは、血を止めるために服を傷口に押し付け、懸命に血の流出を防いどる。
レベルがちゃう。ウチはギル様を助けたくても、なんもできん。
「水汲んできて!」
魔力による物理合成。朝ごはんの皿と同じように、魔力で作ったバケツで水を汲み、届ける。
「コップ!」
魔力を搾り出し、ようやく小さめのを作る。ウチの魔力は、もう限界。
「ありがとう」
そこで、
アイリスの手が止まる。
「煮沸消毒はした?」
黙って首を振る。ギル様の命というのを目の当たりにして基本すら忘れ、言葉も出ず、言われた事もぎりぎりで。
それが今のうちの限界。
「できる?」
「……できん」
アイリスは即座に指輪の玉を、真っ赤な物に入れ替えた。
ずっと近くで、周りを警戒してくれてたフィソラが火を吐き水が沸く。
「冷やして!」
そう呼びかけて、アイリスが指輪の玉を氷の様なものと入れ替える
青く変化したフィソラがブレスを吐きすぐにもとの真っ白な体へ。一瞬だった。
『くっ!』フィソラの顔が苦痛にゆがむ。
『アイリス、大丈夫か!?』
「アイリス!」
アイリスの体から力が抜けて、ウチの方へ倒れてきた。
『無理をするな。お前が倒れては……』
「大丈夫」
全然大丈夫そうやない。
やけど、ウチにこっから先の医療知識はない。ここで止めたらギル様が……。
すぐにアイリスはコップに水を汲み、ギル様の体に付いた、邪魔な血を流す。
手元がようやく見えた。見れたもんやなくて、慌てて目をそらした。
ウチは何をやっとるんや!
魔法で傷口がふさがるまで、止血は続いた。大丈夫やて聞いて、ほんまに安心した。
アイリスは、その時点で虚ろな目をしていたのに……、
「また後で来たらたらええ!そんなに無茶したら!」
「………獣たちは言われたことしか……できなくなってるのよ。餓死しちゃう……」
そう言って、魔獣の催眠も解きに行った。
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