「あの数をこの短時間で。なんとも楽しみな存在じゃわい」
老人がこの上なく楽しそうな笑みを浮かべ、そして急に真剣な顔になった。
「じゃが、仕上げが残っておる。
その男が、どの程度まで生きているかに興味がわいた。渡してもらおう」
ナデシコが後ろの敵を倒すために身構え、アイリスとフィソラがキュア・バブルに包まれたギルバートと、老人の間に立つ。
「さすがに不利か……」
老人がため息をつき残念そうにつぶやくと、森の中から動物が出てくる。
小さく、武器らしい武器を持たないものばかりだ。
自分の城への運搬のため。老人にとってそのていどでしかないもの達。
アイリスとナデシコにとっても、脅威にはなりそうに無い。
それを見たナデシコが、注意を老人に向ける。
3VS1。1にもはや戦う力は無い。はずであった。
「ここは、」
無数の音とともに、小動物たちが三人に飛び掛る。
ギルバートを見張りながらで、避けられない。
「きゃっ!」「な!」
武器といえない貧弱な、しかし獣の爪が二人に刺さり、血がにじむ。
振り払おうにも、小さいので簡単に避けられる。
『こいつら!くそ!』
フィソラはドラゴン。さすがに攻撃は効かないと考えたのか、目に跳びかかられ視界を奪われる。
前足が目に届かない。むやみに首を振れば、アイリスやナデシコに当たり怪我をさせてしまう。
遠くから、何かの足音が聞こえ始めた。
「退くとしよう」
そういった瞬間二人の目もふさがれた。
ナデシコがリスを引き剥がし空を見ると、人影を乗せたグリフォンが飛んでいる。あれならまだ間に合う!
「絶対!逃がさへん!」
翼を出し老人を追おうとして、手を掴まれた。
「いいから!それより布!」
老人なんてどうでもいい。随分前からアイリスが見ているのは、ただ一つだった。
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