「考えていても始まらない。

とりあえず残りを回ろう。じっとしてても仕方ないしな」

地図をさっさとリュックにつめ、それを持って立ち上がろうとする。

「待って!危険かもしれないのよ!」

一理ある。

だが、あまり時間が無い。本来なら、今日の午後にはビーストガーズに帰っているはずだった

どうすれば……。

「じっとするんも同じなんとちゃう?」

思わぬ助け舟が来た。

「危険の内容が分からんのやし、次に危険なんはここかもしれんしあっこかもしれん」

ナデシコが地平線を指差す。

「さっさと終わらして、森から出る方がええんとちゃう?」

『一理あるな』

「そうかもしれないけど……」

まだ心配そうだな。

「フィソラはなんて言ってるんだ?」

「一理あるって……」

よし!予想通り!

「3対1だな。大丈夫だって!何とかなるだろ!」

『私は、賛成というわけではないのだが』

フィソラは中立的だったが、強引に味方と言う事にした。この方が都合がいい。

「そうそう!考える前に動かな!」

ナデシコがちょっと強めに言う。

『その楽観的な意見もどうかとは思うが……。

確かに間違ってはいないだろう』

「さっさと行こうぜ!何か問題があっても、解決すればいいんだ!」

そう行って歩き出す。ナデシコも急いで荷物を持ち追いついてきた。

さすがに移動し出せばアイリスも。

「待って!」

まさか、これだけ言っても不安なのか?

「まだ、お皿を片付けてないわよ!」

……面倒だな……。つい皿から目を背けた。

パチン!

急に目の前のナデシコが指を鳴らした。二度三度と、連続で鳴らしてゆく。

「何やってるんだ?」

「何って……皿を片付けよるんや」

そう言われて皿を見ると、一枚だけになっていた。アイリスも気づいているようだが、驚いてはいない。なぜか感心しているようだ。

何が起こったのかと考えているうちにまた指を鳴らす音がし、同時に残っていた皿が霧散して消えた。

何をやったんだ?

「すごいじゃないナデシコ!大きなものを作るなんて!」作る?

「ありがとうな。実はあれ、アルタイル師匠がプロ並みやねん。

こない褒められるんやったら、習ったかいがあったわ!」

アルタイルの技?

「とは言っても、ウチの武器を媒介にせなあのサイズは無理なんやけど」と言いながらナデシコが照れくさそうに笑った。

あれは何だ?と聞くと、せっかくの明るい空気が台無しになるよな……。よし。

あきらめよう!

そういえば、あの食器は全部ナデシコが持ってきたんだよな。

俺も持ってきているが、重いし壊れるから本当に嫌な荷物だ。

とりあえず、アルタイルに習ってみるか。

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