朝からぶつけられた衝撃の宣告……。
唐突に感じたこの世の終わり……。
とはいえ……やっぱり俺、軽いな。
朝飯一つで、気分が変えられる。
具材は絶妙の煮加減で、口に入れるととろけた。
それだけではない。全てが溶けそうな中でも、きちんと存在を主張し、適度な噛み応えを併せ持つ。
汁も絶妙な味加減で、具材の味を最大に生かしつつ、自らも食べるものの舌を唸らせる。
お見事!と言ってもこの感動は伝わりきらない!さながら有名音楽家の演奏のように、俺の心を揺さぶる。
「どや?腕によりをかけて作った、ウチの自信作は!」
ナデシコが立ったまま俺の顔を覗き込んでいた。
かわいらしく、と言うよりは自慢げとでもいった感じの楽しそうな笑みだった。
「最高だ!」
こんな言葉しか出ない自分が憎い。もっとこう、なにかあるだろ?この感動を伝える方法が!
にもかかわらず、「よっしゃ」と言いつつ小さくガッツポーズを決め、一層楽しそうにナデシコが笑う。
その無邪気な様子を見ているだけで、心が満たされていく気がした。
隣のアイリスはうっとりとしながら口に運んでいるし、向こうにいるフィソラは、顔を突っ込んでいる。
しつこいようだが、塩と砂糖しか持って来ていない。確保が難しいので肉は残しておいたが、他の食材は昨日使ってしまった。
現地調達なので、揃っていないものもある。
そんな中で、これだけの味……。
「また俺たちと組んだら、作ってもらっていいか?」
気が付いたら口にしていた。
「当たり前やん!ギル様に食べてもらえるんやったら、毎日でも!」
「まじか!?だったら……」
「ん!んんっ!」
アイリスの咳払いでハッとした。
ここでナデシコに頼むと、アイリスとの仲は確実に悪くなる……。
天秤にかけると。
「……ミッションの時だけ頼めるか?」
アイリスの方が重い。
「ギル様が言うんやったら、それでもええけど」
少し残念そうに、自分の分を口に運ぶ。
それに続いて「私が作ってもいいわよ!」とアイリスの恐怖発言。
俺を殺す気か!
いや、そんなわけは無い。純粋な親切心のはずだ。
「ありがとな!でも、俺が作るから大丈夫だ」
「そう?」
それだけ言って、また食べ始めた。
悔しいことに残念そうな様子が無い……
次へ