「ギルバート!起きて!」

アイリスの声。あれ?俺起きたんじゃなかったか?

目を開き起きあがる。確かに横になっていたようだ。

……夢?あれは全部?

「どうしたの?ずいぶん寝起きがいいけど」

アイリスが真剣な顔で周りを見渡す。警戒?

ああ、そうか。

「危険を感じたわけじゃない。大丈夫だ。」

「ふぅ〜ん」

アイリスが、不安げに俺を見る。と、同時に怪しげな目も向けられている。

とはいえ言えるわけない。あんな夢を見るなんてとんだ妄想男だ。

くそ……俺のファーストキスは妄想の産物かよ!

「ごはんできたで!」

声の方を向くと、ナデシコがいた。いい匂いがする。

うどんに使った小さめの鍋と、フィソラ用の大鍋が火にかけられていた。

……味噌の匂い。みそ汁か?

「ギル様!これ!」

ナデシコが寝袋の前に鍋を置いて、次のを取りに行く。おしい、豚汁だった。

器用にもやしでハートが書いてある。

そういやギル様って……夢じゃなかったのか……

「……付き合ってるわけじゃないからな」

誤解されそうなので、念のため隣で固まっているアイリスに言っておく。

「う、うん。分かってる。

あなたに限って」

お!いい感じ!

「もてるなんて思えないし……」

アイリスが「あっ!」と言って口を押さえる。

俺絶対、……この世の終わりみたいな顔してる。

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