ギルバートはナデシコと二人っきりになりたがっている。
関係ないと思っても、アイリスはどうしても気になり、そして気が付いたら、戻っていた。
フィソラは心配していたが、体が大きく気づかれやすいので、先に行ってもらった。
なのにいざ戻ってみると、二人はいない。なにか分からないかと聞き耳を立て、そして見つけた。
二人は人目から隠れるかのように、崖の下にいた。
音を立てないよう細心の注意を払い、坂を下りる。
『声をかけないのか?』
こういうことに関しては鈍い、フィソラの助言。
念話といってもアイリスは声を出さなければならない。ごめんと心の中で思いながら、アイリスはそれを無視した。
恋の話かもしれないと思った。
「ランクAが飛んでて……」
それだけで気が付いた。
ナデシコが騙している、そう考えると今までの怪しいところがいくつも思い浮かび、すべて説明が付いた。
分からなかったのは、ギルバートの部屋にいたのはただのミスという事とリーリアの指示内容。
ギルバートがレグルスの事を言わないかと心配になったが、ほっとした。
そして、ナデシコの言葉の意味。理解したアイリスの顔が赤くなる。
あのタイミングだ。告白とも取れる。
ただ、これからナデシコが自分の意思で何をしても……リーリアの指示だ。
アイリスは当然可愛そうに……思わなかった。
思ったのだが、それは大分後だった。この時点で思った事。
ただ、ギルバートが鈍くてほっとしていた。
「とりあえず、アイリスには黙っとけよ!」
これには少し腹が立ち、アイリスが歩き出す。そしてギルバートの後ろに立った。
「ほとんど聞いてたわよ」
秘密にされて、怒るはずだった。自分でも違和感を感じていた。
だがアイリスは、どうしてだか気分が良かった。
驚いて、マヌケになったギルバートの顔を見たからかもしれない。だが、違うかもしれなかった。
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