「で、リーリアのアホはなんて言ってたんだ?」
「二人にちょっかい掛けて強引に進展させなさい。
あんたがギルバートに近づきゃいいだけよ!……って」
「それのどこに効果があるんだ?」
「アイリスは焼きもち焼いとったし、効果はてきめんやんか!?」
ナデシコが驚いた様にそう言う。
確かにはたから見れば、アイリスの態度は焼きもちのように見える。俺にもそう見えた。
でもそれはない。ない理由は簡単だ。
ただ、アイリスには好きな奴がいる。しかも当の本人が頑固で一途だ。そして両思いにしか思えない。
とはいえ、そんな事までナデシコに話すわけにはいかないしな……。
「とりあえず、アイリスが焼きもちを焼くなんて絶対無い!」
ナデシコが呆気に取られた表情で俺を見る。反論が来そうだったので、
「見返りが無いとここまでしないよな?」
すかさず質問をぶつけた。
こんな作戦、かなり恥ずかしいはず、ましてや好きでもない男に迫るってのは最悪なはずだ。
「……うまいことやったら、ちゃんと教えてくれるって……」
「……」
おいおい………。いったい、何がどうなってリーリアの弟子になんてなったんだか……。
「教えてくれたんはアルタイル師匠で、全部手取り足取り、ウチの戦い方はほとんど。
リーリア師匠は尊敬しとるけど……技術は盗む物って言うてて……」
でまかせ言いやがって……景色が見えるようだ。
とにかく全部、リーリアのせいか!
帰ったら覚えてろ!こんちくしょー!
「とりあえず、リーリアには俺から言ってやる」
強引に気分を落ち着けてそう言うと、ナデシコがぱっと笑顔になった。
今大事なのは、リーリアをとっちめる事よりナデシコだ。
このまま、教えてもらえないんじゃあまりにかわいそうだ!絶対に何とかしてやる!
「今までのは、全部演技だったんだよな。そういうのはもうやめてくれよ?」
ナデシコがゆっくり頷き、大きくため息をつく。
「ウチは、随分でかい獲物を逃してしもたんやな……」
俺を見つめて、ばれたときよりも残念そうに、そう言ったナデシコ。
「何の事だ?」
まったく何の事だか分からない。
「あんまし気にせんといて。ただ一緒に話しとる間、ウチはめっちゃ楽しかったで!」
「ふ〜ん。そうか」
とりあえず、笑って返した。が、やっぱり分からない。
「とりあえず、アイリスには黙っとけよ!」
「え?あ、いや〜………無駄や思うで」
ナデシコが俺を指差す。
違うか。後ろ?
「ほとんど聞いてたわよ」
なぜかほんのり頬を紅くしたアイリスが、仁王立ちしていた。
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