気絶したナデシコはアイリスが担いでいる。

俺が運ぶ気だったが、どうしても運びたいらしい。

「悪い事しちゃったから」だそうだ。

遠くから、フィソラの大きな雄叫びが聞こえた。休める場所を見つけてくれたようだ。

「これで今日は安心だな」

「……そうね……」

小さな声で返事が返ってきた。

「大丈夫か」と立ち止まって聞くと、予想通り「ごめん……。変わってもらってもいい?」とかすれた声が返ってきた。

よく見ると脚がふらついている。やっぱり、アイリスにはきつかったか。

しかも、途中で川を越えた。水が綺麗なため服が濡れるのは気にならなかったが、深かったため動きにくかった。

遠かれ早かれこうなるだろうと思ったし、限界が来る前であって欲しいと思っていたところだ。

「任せろ!それにしても………」

ナデシコを背負った。かなり軽い。

「演技上手いな」

アイリスに聞こえないよう小声で言うと、背中越しに鼓動が早くなるのが伝わってきた。

やっぱり起きてる。

そろそろ理由を聞いておくか。

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