ようやくジャングルに着いた。

なぜかアイリスがイラついているが、とりあえず全員無事だ。

……なんで、ジャングルに入る前からそんな事気にしないと駄目なんだ……

まあいいか、これからその心配もなくなるんだし。

「ナデシコ。そろそろ離れてくれ」

約束どおり、ナデシコが俺の腕を離す。が、すぐに左手が握られた。驚いて振り向く。

「あ、あの……。ウチ昨日、森で迷って遅うなってしもたんです。

お願いやから、離さんといてくれませんか?」

開いている左手を、軽く握って口元に、しかも上目遣いで俺を見つめるナデシコ。

可愛すぎる!写真で見るのとは桁違いだ!

目がウルウルして、子犬のよう。そんな物見せられたら……。

しかも、ちゃんとした理由もあって、そんな可愛く言われると……。

アイリスが気になって後ろを見た。

「ふん!」

そっぽを向かれた。

「昨日は森の中に1人だったんです。ウチもう怖くて、怖くて……。」

ナデシコが俺の手を強く握り締める。だが、ここはちゃんと断って。

「………ほんとに道に迷ったら、やばいよな」

俺のバカ野郎!

俺が好きなのはアイリス、それは間違いない。いくらナデシコが可愛くても、愛しているかと聞かれれば違うと答える。

ただな……、可愛い女性と手をつなぐってのも、なかなか無いおいしい展開なんだよな。

どうせ今だけだし。……ちょっとだけ……。

「アイリス、なにがあるかわからないからちゃんと着いてきてくれよ」

アイリスの故郷は森だ。俺より慣れているのでさっさと一人で行ってしまうかもしれない。

嫌なものを見たくないからと、一人で動き回ることも有り得る。

孤独が嫌いだから絶対戻ってきてくれるとは思うが……こんな事まで心配するなら普通の任務のほうが楽だったな……。

それにしても、背中に分厚い鉄壁がありそうだ。

「分かってるわよ!それよりナデシコが迷わないように気をつけて!」

正論だが、やっぱり怒ってる。

原因はともかく、それでどうして怒るのかがわからない。

最初に思い浮かぶのは焼きもち。それは無い。

悔しい事に、アイリスが好きなのはレグルスだ。俺が自分で聞きだした。

確かに俺よりカッコイイし、正々堂々の勝負だと俺が負けたかもしれない。

それに、俺への態度とレグルスへの態度は全く違う。

レグルスの前の方がくつろいでいるし、頬を赤くすることもザラにある。

対する俺はというと……喧嘩が多い。フィソラがいなければ、どうなっているか。

とりあえず手を離すか……。そうすればアイリスの機嫌も!いや……

本当にナデシコが道に迷ったらしゃれにならない。サバイバル知識のあるアイリスとは違う……。

どうしろってんだ!俺に!

「どないしたんですか?」

ナデシコが心配そうに尋ねる。顔に出ていたのだろう。

「なんでもない。何とかなるさ」

そう、案外何とかなるもんだ。

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