「それがすべてじゃ……。その後のアイリスは、あの家で一人で暮らしておる。」
話し終えた長老の顔は寂しげだった……。
「その、レグルスという少年は?」
アイリスと同じ境遇の少年……、彼のことも気になった。
「村の中で暮らしておるが、村人の嫌がらせが絶えん……。厳しい生活をしておる……」
「そうですか……。」
村を離れ一人で暮らすアイリス。村で暮らし、嫌がらせを受けるレグルス。
何とかしたいと思うが……、よそ者の俺に解決できるだろうか……。
そもそも、余計なお世話ではなかろうか………。
「おぬしをアイリスの家に泊めることにしたのは、」
考えていると、突然長老が話し出した。
「彼女を守って欲しいからじゃ……。わしはそなたのそのまっすぐな眼を信じたい。
彼女を頼む!」
そういうことか。確かに村人にそんな事頼めないな。
待てよ……レグルスって奴も同じ境遇なら、そいつの家に泊まればいいんじゃないか?
村から離れた家に男女ってのはまずいだろ。もちろんそんな気はないけどな……。
「長老、どうしてアイリスなんです?レグルスの家でもいいはずでは……。」
わからない……。この長老は、なぜ俺をアイリスの家に?
普通、男の方に泊めるだろ!
「そのことは、今は話せん……。むしろ知らぬほうがいいじゃろう……。」
何か訳はあるようだが……まあいいさ。アイリスを守ることだけであの家に住む十分な理由になる。
「ところで、名前を聞いておらんかったな。わしの名はウロボス。そなたは?」
「俺はギルバート。ビーストガーズの期待の新星です。」
「ギルバート殿、アイリスを頼みましたよ。」
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