『……やはりな……弱い……』
前を向くとランドがいた。背にはシリアが乗っている。ランドの下には……穴?
「えらそうな事言ってたくせに、ざまあないわね。残念よ、もっと楽しめると思ったのに」
どうなっているんだ。地面に潜るんだから地属性のドラゴンだろ!?
風属性でもないのに、この速さはまずない……。
純粋な高速移動じゃないはずだ。
「さあもう一回逃げて!こんなのつまらないわ」
「そうさせてもらうぜ!」
風呂に向かって逃げつつ、あの速さの秘密を確かめる。
俺の予想が正しければ……ここには来れないはずだ。
目の前の木に登った。枝から枝へと飛び移る。
移動速度は落ちても、これでどこにいるかわからないはず……。
「残念でした!」
声と同時にすぐ下から黄色い麻痺ブレス!やばい!
木から飛び降り事なきを得る。飛び降りた先にはシリアがいた、またランドに乗っている。
いきなり現れたとき、必ずランドに乗っている上、下には穴がある。それなら……
「おまえのドラゴンの能力は、地中の瞬間移動だろ?」
「さすが一度はわたしが惚れた男、もう気づいたのね」
やっぱりそうか、それならこの速さにも納得がいく。ただし後1つ……。
「どうやって俺を見つけたんだ?」
「あなたが倒れたら教えてあげるわ」
『……その通り……』
急にランドがブレスを吐いた。簡単に当たるかよ!
走ってまた逃げる。追撃は無しか……なめられてるな……。
今度の作戦は一か八か……これが通じなければどうしようもない。……剣で斬るのが無しとすればだが……。
しばらく走って、二人が見えなくなったところで止まった……。
今までの俺は動き回っていた。鬼ごっこで立ち止まって一息って奴はいないだろう。
なら逆に考えてみれば簡単なことだ。動く物を見つける能力……、それなら無敗記録も可能だ。
動く者に限定したのは、すでにランドの能力がわかっているからだ。
一般的にはドラゴン一体に強力な能力は1つ。
これが当てはまらないのは、ヴリトラやフィソラのような特別なドラゴンだけだ。
後の力は弱いものばかり、精密な広域探索なんてできるはずない。
ただしそれも、動く者というかなりアバウトな判断基準なら……持っているかもしれない。
これで見失ってくれれば……
「馬鹿ね!じっとしてて逃げられると思ったの?」
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