今度は、目の前の地面は割れなかった。その代わり……。
「下を見てご覧なさいよ!」
足元が、割れて光りだした……、回避は間に合わない……。
話す間もなく黄色いブレスが直撃し、地面に倒れた。指一本動かない……
俺の足元で、地面の割れる音がした。
「惜しかったわね。目の付け所は良かったわよ」
どこでミスをしたんだ?訊こうにも口が動かない。
「探索魔法を使ったのは、わたしよ」
なるほどな、それならこんな芸当も可能だ。的確な指示と地中の高速移動。
無敗記録を作るわけだ。
「もう十分気が済んだわ。深夜には動けるようになるけど、それまではそのままゆっくりしてて!
このわたしを振るなんて!もう二度とその顔見せないでよね!」
怒鳴るなよ……。それより、
……俺このままか?ああ……アイリスの風呂が遠ざかる……
「あっ!後もう1つ」
今度はなんだ!?
「あなたとの約束どおり、あの二人はなんとかするわ。安心してアイリスと一緒に出て行って!」
……これが最初に聞きたかった………。
足音が遠ざかっていく。……誰もいない、これじゃあ風邪ひいちまうな……。
『どうしたギルバート。何があったというのだ』
俺の横に空から何かが降りてきた。白い体とこの鳴き声は、フィソラか?
助かった……。
フィソラが俺を背に乗せ運んでゆく。降りた先はアイリスの家だった。
『アイリス。ギルバートが倒れていた!』
ドアの開く音、誰かが走って近づいてくる。たぶんアイリスだ。
「……麻痺してるだけよ……。何があったのギルバート?
って、答えられるはずないわね……」
話せないし、身振り手振りで伝えるのも無理だ。
「……双眼鏡………。見つけたのはどこ?」
『露天風呂の近くだ』
「へぇ〜そうなの……。今なら、何も抵抗できないわよね?」
アイリスの顔が、怒りに染まる……。
乱暴にフィソラから降ろされ、段差のある玄関を投げ飛ばされた。
家の中で、散々罵られたのは言うまでもない……。
言い終わったアイリスがイライラしていなかったのが、不幸中の幸いといったところか。
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