ーー6年近く(正確には5年8ヶ月)昔、長老の家ーー
その日は、アイリスと同じ年の子供が、パートナードラゴンを召喚する日じゃった。

すでに、何人も召喚を成功させ、その子の隣にドラゴンが座っていた。

……まあ、なついてないから噛もうとしておるがな。

幼体のドラゴンだから、どのドラゴンも抱きかかえられるほど小さい。

「次の者、前へ!」

わしが呼ぶと一人の少女が中央に立った。幼い頃のアイリスじゃ、不安そうな顔じゃった。

両親は行方不明になっておってな。わしが面倒を見ておった。

「大丈夫かの?心に浮かぶ言葉をつぶやけばいいのじゃ。頑張るのじゃぞ!」

「大丈夫です長老。ありがとうございます。」

あの子は笑顔で返したあと、床に書かれた魔法陣の上に乗り、こう話した……。

「強く皆を守る私のパートナー。どうか来て……」

足元の魔方陣が光り、小屋の中に光があふれる……。他の子と明らかに違っていた。

普通は、ほのかに光るだけなのじゃ……。

光が消えた時、アイリスの腕の中には眠っている白竜。最強とも言われるドラゴンの1つエンシェントドラゴン。

周りがざわつき、時々よくない言葉が聞こえだす。

「あの小さな子がエンシェントドラゴンだと!」「危険すぎるわよ!取り上げるべきね」

「その通りだ、制御しきれない程の力は災いを……」「その通りね、あの子を追い出せば、あのドラゴンも付いてくわ」

「静まれ!今は神聖な召喚の儀式の最中じゃ。」

声がやむ。じゃが……アイリスには聞こえたじゃろうな。あの声が……

「アイリス。そこに並んでいなさい。」

アイリスは泣きそうな顔じゃった……。10歳にあの言葉はな………。

じゃが、よもやエンシェントドラゴンを呼び出す者がおろうとは……。天才というやつか。

流れを戻さないといけなかった、このままではアイリスが……。

「次の者、前へ!」

動揺を隠し、次の者を呼ぶ。次の者で最後じゃった。

わしは、あわよくば珍しいドラゴンを呼び、アイリスの話題を変えてくれることを願った!

じゃが都合のいい考えじゃった……。前に出たのは黒い髪の美少年、レグルス。

アイリスと同様、両親はおらん。わしが面倒を見ておる。

整った顔に青い目、メガネをかけている。背も高く、女の子にはとても人気のある男の子。

運動は苦手じゃったが、読書が趣味で頭も良いおとなしい子じゃ。

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