「わしが話したいのはこれだけじゃ。何か訊きたいことはあるかの?」
またいつもの口調に戻った……。切り替えが早いな……。
「1つだけ訊きたい事があります。
レグルスを監視していたなら、なぜ止めなかったんです?
ヴリトラはまだ幼体。十分勝ち目があります」
あと分からないのはこれだけだ。
長老に向かってでなければこう言った……。
レグルスの行動を知っていたなら止めろよ!アイリスと俺に余計な手間をかせさせやがって!と。
正直少しムカつく。もちろん、まともな理由があれば仕方ないが……。
「わしが動けば、それだけ大きな騒ぎになった。そうすれば、村人が伝説を知ってしまう可能性が高くなる。
もしそうなれば……」
「レグルスはもちろん、対になる存在、フィソラを召喚したアイリスも、さらに酷い嫌がらせを受ける……」
「そうじゃ、それだけの危険を冒すよりも。1人の死人も出ぬよう気を配った方が良いと思ったのじゃ
それに、あの3人はそうされても文句が言えぬことをいくつもやってきておる。ここらでお灸をすえてやらねばな」
「そうですか」
あのままだと1人死んでいた。俺だ。
長老が気をつけていたから、俺は死なずにすんだ。
「分かったらベッドに戻りなさい。まだ傷は治っておらぬ。
アイリスは、祭りが始まった後は自由に行動して良い。くれぐれも村人に見つからぬようにな」
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