「ヴァイスドラゴンを従えし男、いつの時にか村に現る。
その者の呼び出したるは、幼体なり。
呼び出されしヴァイスドラゴン、名を与えられ男に忠誠を誓う。
黒く赤き眼を持てども、その中身、主を守る忠臣なり。
分かるじゃろう……これがヴリトラでなくて誰を表そうか。そして、ここからが大事な部分じゃ。
アイリス、おぬしにはちときつい内容かも知れぬ……」
「……分かりました……」
さっきよりはマシになったとはいえ、泣きながらアイリスが返事をする。
どうしても聞かないといけないのか?
アイリスはまだ16歳……これだけの苦労をしてきて、この話を聞かなかったからといって……誰が彼女を責められる。
「長老様。どうしてもアイリスが聞かないといけないんですか?
知らなくてもいい事実もあるはずでは?」
「……彼女には聞く義務があるといっても過言ではない。すべてを知らなければならないのじゃ」
「それなら俺が聞いておきます。また後でアイリスに話せばいい!」
どうして今にこだわるんだ!こんなに泣かせてまで……。
もう十分、苦労も覚悟もしてきたはずだ。一度くらい、手を差し伸べてもいいはずだろ!
「それはできんのじゃ……分からない事があってはならん。わしと話せるうちでなければ、質問を聞くこともできん」
「長老!」
長老が立ち上がった。
「わしがアイリスが嫌がることをしたいと思うか!話さなくてよいなら、わしとて話したくはない!」
怒鳴った長老の顔は、怒っていなかった。ただ、悔しそうな顔をしていた。
だったらせめて、泣き止む時間を与えて欲しい。
「だったら、時間を開けてそれから……」
言い終わる前に、肩を叩かれた。
「……ありがとう。私は大丈夫だから……」
後ろを見ると、アイリスが涙を流しながら、微笑んでいた。
「本当にありがとう。でも……嫌な事は早く終わらせたほうがいいわ」
アイリスが長老を見た。
「教えて下さいウロボス様!その後を!」
強いな……俺よりずっと……。辛いはずなのに……
「わかった」
それだけ言って、長老は再びイスに座った
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