スカイが長い尾でギルバートを抱えて、隣の部屋に入った。
『相棒!用件はこれだけか?』
「いや、念のためにまた見張りを頼む。絶対安静じゃ!」
『オッケーだ。任せときな!』
これでギルバートは大丈夫。
あの時は来てくれて嬉しかったけど……、彼には元気でいて欲しい。
少し勝手かも知れないけど、明日の出発まではゆっくり休んでて……。
「さて、アイリス。重要な話じゃが……」
いよいよ。きっと私の人生の中でも、特に大事な話になる。
集中して、一言も聞き逃さないようにしなきゃ!
「びっくりする話と今後の話、どっちからがよい?」
軽い口調でそういわれても……いいの?そんな軽いノリで……
「今後の話でお願いします」
これでようやく、本当に大事な話が……。
「これは一回話したことなんじゃが……」
「………本当に重要な話なんですか?」
私が知っている限り、ほとんどそんな話を聞いたことが無いはず……。
あるとしたら……、フィソラの宝玉?
「もちろんじゃ、最も大事な事とも言えるかも知れんな。
フィソラの能力を目覚めさせる4つの宝玉についての話じゃ」
やっぱり、でもあれ以上何を知る必要があるの?
それぞれの宝玉の力と、それぞれの能力。すべて把握したはずよね。
「あの宝玉じゃが……実は、無くてもいいものなのじゃ!
びっくりしたかの?どうじゃ!重大な今後の話と見せかけて、これもびっくりする話だったのじゃ!」
…………
真剣に聞いてたのに……、ふざけるのもそこそこに……
「ウロボス様!」
「そんなに怒るでない。ちょっとした冗談じゃ!
元気が出たところで本題に入ろうかの」
もしかして、私を元気付けるために……。
そうよね、まさかこんな時に本気で冗談はないわよね……。
「すいませんウロボス様。あなたの親切にも気づかず、怒鳴ってしまって……」
「何の事じゃ?」
……本気だったの………
「もういいんじゃろ?吹っ切れたような顔じゃったから大丈夫だと思ったんじゃが……。
すまなんだな」
「いえ、気にしないで下さい。それに、あなたの言うとおりですから……」
自分でも驚くくらい。ほとんど寂しさなんて感じない。
私は今、レグルスを救う事ができてむしろ嬉しい。村人になんて言われてもいい、私は自分のやるべきことができた。
唯一寂しいとしたら、彼と離れ離れになる事。でもそのおかげで、彼は私の望んでいた生活を手に入れた。
それだけで、十分……。
それに私の本当の夢は、村人と楽しく暮らす事じゃない。
村人との暮らしで、叶えられたはずの夢。レグルスとの戦いであきらめた私の本当の夢。
私の夢は……ギルバートが叶えてくれた。
私の夢は……隣にいつも、大切な誰かがいてくれる生活。
大切な人が……すぐ隣にいてくれる事。
レグルスは村に居るから、なかなか会えなかった……。村人と仲がよければ、もっと一緒に居られたのに。
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