「緊張しなくても良い。ただすべて素直に答えて欲しいのじゃ。
かまわぬかな?」
先ほどと同じく、明るい調子で話す。その方が俺としても話しやすい。
「もちろんです。俺もあなたに話したいことがあります。」
「それはあとで聞こう、まずはわしの質問に答えてはくれぬか?おぬし、何のためにここに来たのじゃ?」
俺はここまでのことをすべて話した。山に登った理由、崖から落ちたこと、そしてアイリスに助けられた事。
「そうか、わしが聞きたいのはそれだけじゃ。おぬしの話したいこととはなんじゃ?」
「先ほど話したとおり、俺はパートナーを探しています。
もしこの村の中でパートナーになる人と出会えたら、外に連れ出してもかまいませんか?」
駄目もとの質問だ。ここはドラゴン使いの村、強者ぞろいの村である。ここでパートナーが見つかれば申し分ない。
だが、村の人間を外に連れ出せば、場所がばれる可能性は高くなってしまう……
「それは個人間の問題じゃからの、わしに止める権利は無いじゃろ。
じゃが、一度出たら村には戻ってはならん。ここでのことも他言無用じゃ!」
そんな事はもちろんわかっている。あとは、誰かパートナーが見つかればバッチリだ。
「それよりまだ訊きたい事があるのではないか?」
すべて、お見通しってわけか。話したいことってのも、この事だったのかもな……。
「アイリスの事です。どうして、あんなに離れた家で一人暮らしを?
ましてや、俺は外の見知らぬ人間です。それでどうして、俺を彼女の家に?」
思いをすべてぶつけた。明らかにおかしい……、家と村が離れている事を聞いたときの反応も、何かある!
なぜだか、俺は彼女をほおっておけなかった……。
「もう6年近く昔の話じゃ……。共に暮らす以上は、知っておかねばならん!
わしは……この日を忘れる事はないじゃろう……忘れてはいけないのじゃ!」
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