第9章:ヴァイスドラゴンの伝説
「ようやく来たか。さて、大事な話じゃが……」
「ウロボス様、申し訳ありませんが少し待っていただけませんか?
ギルバートと話をしたいのです」
ああそうしてくれ!さっさと話してすっきりしたい!
「かまわん、じゃがあまり時間はかけられぬのじゃ」
「大丈夫です。すぐに終わります。そうよね?」
「さあな、内容によるだろ」
アイリスが納得のいく話を聞かせてくれれば、早く終わる。
逆に、考えも無しにあれだけの行動をしたのなら……、今後の事もある。
きつめに話さないと、危なっかしすぎる。
「さっきも言ったが、俺がいなかったらどうする気だったんだ?
まず間違いなく村を出て行かざるを得ないだろ!」
この村は外との交流を絶っている。外には知り合いもいないはず。
「村を出ても、遠くの森にすむことはできるわ!もともと毎日がサバイバル生活なんだから、今と生活は変わらないはずよ!」
確かにそれなら、今後は大丈夫だ。だが……
「身の回りにいるのは、フィソラだけか……随分と寂しい生活だな」
「……それぐらい覚悟してるわよ」
どれだけ寂しいか分かるか?
俺だってこの世界に来たとき、周りに一人も知り合いがいなくて、誰とも話せず……。
下手すりゃ気が狂う生活だった。経験しないと分からないか……。
「まだある。レグルスに勝てる自信は?村人が信じなかった場合は?
イドロットたちが本当のことを話したら!?
それをすべて解決したのか!」
俺が言ったのは、全部大きな問題。もっと小さい問題ならいくらでもある。
最悪でも、この3つが大丈夫な状態でなければ、実行に移すべきじゃなかった。
「……何とかなったはずよ。村人はウロボス様に従うしかない。嘘だと証明しようにも方法は無いわ。
イドロット達は、もともと信用が無いし、証言は何の役にも立たないわ」
「レグルスは?」
アイリスが黙る。これだけは言い返せるはずが無い。
俺が行った時、すでに負けているようなもんだった。あそこでレグルスが情けをかけてくれたから良かったものの……
「あれは……、勝つか負けるかじゃなくて。勝たないといけない戦いだったの!」
確かにそうも言える。だが、俺が聞きたいのはそういう精神論じゃない。
「俺が聞きたいのは勝てるって根拠だ。何かあるのか?」
「………」
やっぱりな……。ただ、問題がこれだけなら、今後は解決できる。
「今後は俺を頼れよ。一人で何とかしようとするな」
俺がいれば一人じゃない。協力して勝つこともできる。
「ありがとう。今度からはそうするわ!」
笑顔で返す。強がる様子も、心にも無い嘘でもないようだ
これだけ素直に受け入れてくれたなら……連れて行っても大丈夫だな。あとは……
「改めて頼む。俺のパートナーとしてビーストガーズに入ってくれ!」
「もちろんじゃない!あの時だって、レグルスを止めたらすぐに入るつもりだったわよ」
「え!?レグルスとずっと一緒に居たいから、入らないんじゃなかったのか?」
あの言葉は?
「途中であなたが話し出したんじゃない!
『ごめんなさい。私は………レグルスを止めないと』って言おうとしたのよ」
なんだそれ……!俺の心配はなんだったんだ……
あんな事になっていなければ、来てくれないもんだと……気が抜けた。
……なんだ?体がおかしい……
力が入らない。目の前も暗くなってきた。
そのまま、気絶して倒れた。
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