「誰がブスだ!子供は黙ってろ!これは大人の話し合いだ!」
「笑っちゃうわね。大人なら大人らしく落ち着いて話しなさいよ。
それともわめき散らすのが正しい大人の姿なのかしら?」
相変わらずの言葉遣いだな……。こりゃ相手も……。
「ふざけるな!大人をなめてるのか!」
まあ、そりゃ怒るよな。
「大事なのはただ1つ。これが長老の判断という事だけよ!
この村では長老の言う事は、絶対じゃなかったっけ?
さっきから子供、子供って!その子供が村の決まりを守ってるのに……。
自称大人のあなたは守らないのね〜。……あら!ごめんね〜、お姉ちゃん言い過ぎちゃった!」
笑いがこみ上げてきた。若い男は苦虫を噛み潰したような顔で止まり、震えている。
言い返したくても言い返せないのだろう。言い方は最低だが、的を得ている。
ナイスだシリア!
「お姉ちゃんもう向こうに行くけど、もうそんなこと言っちゃ駄目でちゅよ〜」
男の顔がこれでもかというほど赤くなる。それでも言い返せるはずが無い。
何といわれようが、悪いのはあの男だ。
シリアがこちらにウインクして去っていった。まさか助けてくれるとはな。
「その子のいうことはもっともじゃ、……言い方は悪いがの……
以上で閉会する!皆の者祭りの準備じゃ!」
村人が雲の子を散らしたように方々に去っていく。あの男も、おとなしく去っていった。
誰もいなくなったあと。
「レグルスは、村人を手伝っておれ。その方が早くこの状態に慣れるじゃろう。
アイリスとギルバート殿は、すぐわしの小屋へ。大事な話があるのでな」
またいつもの、軽い口調でそう言った。
「僕もそろそろ行くよ……。これも、もういいよね」
もともと見せ掛けだけの拘束。
レグルスが持っていた、縄の端を引っ張るとそれだけで結び目が解けた。
「君を助けたかっただけなんだ。それなのに、こんな事になって……ごめん。
ここで長く話すわけにもいかないし、明日の朝話すよ!」
そういってレグルスも村人の元へ向かう。表情が暗く、足取りも重かった。
村人にとって彼は命の恩人という事になっている。さすがに何もされないだろう。
せっかく村人と仲良くなるチャンスなのに、そんな状態でいいのか?
「……レグルスと村人を一緒に作業させて、環境に慣れさせるのも考えてたのか?」
隣のアイリスに尋ねた。長老は最後までアイリスからの手紙を見ていた。ならもしかして……
「祭りを開くところからは、ウロボス様の考え。まさか、1日だけでも村に居る時間が出来るなんて……。
祭りの間は、誰も本当に私がウロボス様の小屋にいるかなんて気にしないもの!」
笑って話している……。なぜだ!
「本当はしてない事まで罪をかぶって、そこまですることないだろ!
こんな状態で村を追い出されて、それでいいのか!?
よくあんな無謀な作戦を!だいたい、俺がいなかったら村の外で路頭に迷っただろ!」
つい怒鳴ってしまった……。
「静かにしてよギルバート!誰かいたらどうするの!」
「しーっ」と口に手を当てて怒る。怒りたいのはこっちだ!相談ぐらい……あっ。
アイリスの中では俺、死んでたっけ……
「話すならウロボス様の小屋に入ってからにして!」
「その代わり全部話せよ!言いたい事はまだまだ……!」
「だから少し静かにしてってば!」
アイリスが俺の口を、手で押さえる。
「……ひゅまにゃい……」
「すまない」と言ったのだが、通じたかも定かじゃないな。
「私と話しているのが見られたら、あなただって犯人だと思われるのよ!
お願いだから、もう少し気をつけて!」
アイリスが俺から手を離し、長老の家に向かった。
話したいことだらけだ。特に今回のアイリスの計画は、無謀にも程がある!
穴だらけの作戦、……事実、失敗しかけている。
そもそも、レグルスに勝てる自信は有ったのか?俺が行かなかったら確実に負けていた。
喋るとまた大きい声が出そうだったので、そのまま黙って長老の家に入った。
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