「縄を解くけど、逃げるなよ?」
連れて行くなら、縄を解いた方が楽だ。今更逃げるとも思えない。
「ええ、正々堂々の勝負で負けてしまったし……、おとなしくするしかないですね」
『我の主人たるレグルスが、そのような真似をするはずがなかろう!』
やっぱりな。こいつはここで逃げ出すような、卑怯な奴じゃない。
縄を解き、アイリスのところに連れて行った。
「ギルバート。その縄で私の手を縛って!」
「は!?……………どうして?」
とんでもない事を言い出した。意味が分からない。
「理由も分からないのに、そんな酷い事出来ないよ!」
レグルスの言うとおりだ。
「いいから!村について、ウロボス様が話し出したら全部分かるわ!」
なぜ話さないんだ?やっぱり何かあるのか………。
「理由を話してくれないか?それまでは、俺もそんなこと出来ない」
やっぱりとんでもない事を始める気がする。俺の気のせいだといいが……
「……分かったわ……」
ようやくか。
理由も分からず、ましてやこんな作戦には協力できない!
「ギルバートと一緒にビーストガーズに入るって、みんなの前で言うだけよ」
「入ってくれるんだな!?」
「もちろんよ。もういい?」
「いやまだだ。縛るのはどうしてだ?」
「村人が私を恐れているから。そうすれば少しは落ち着くでしょ?」
なるほどな、来る時に聞いたあの騒ぎで、アイリスはもう完全に村の敵扱い……。
村に入るには、こうするのが一番簡単だ。長老が捕まえたように見えるだろう。
最初からそう言えよ……。
「もういいわよね」
アイリスが両手を差し出す。
「そういう理由なら仕方ないよな……」
気が引けたが、理にかなっている。確かに有効な方法だ。
手に持った縄で、両手首を縛った。
「待ってよアイリス。そんな事しなくても村に入れるはずだよ!
今までだって、嫌な思いをしながらでも入れたじゃないか」
そういや、レグルスはあの騒ぎを知らないんだった。
「……村で暴れてからここに来たの……。
村の人達は、私の事を悪魔のように思っているはずよ……」
辛そうだ……そりゃそうだよな。こうなると分かっていても、実際にそうなったら落ち込んで当然だ。
「……そんな……どうしてそんな事したんだよ!?」
「この計画のためよ。こうするしかなかったの……。
大丈夫よ!計画通りに言ったらね」
次へ