話を聞くと、とりあえず異世界ではないらしい。その他の事もいくつか解った。
まずこの一族では10歳になるとドラゴンを召喚しパートナーにするそうだ。
そして、力を求める者から一族を守るため、場所を秘密にしているらしい。
幼体のうちにドラゴンを奪って手下にするような、最低な人間も確かに居る。
俺が助かった理由も訊いたのだが、分からなかった
アイリスが俺を見つけてくれたときには崖下に倒れていたそうだ。
俺の生命力が強い、ということにしとこう。それより、俺の紹介もしないとな。
「助けてくれてありがとう。俺は、ビーストガーズに勤めているギルバートだ。よろしくな!」
握手をしようと手を差し出す。だが、突然不安になる。
俺はこの子にとっては見知らぬ男だ。受け入れてくれるだろうか……
「ええ、よろしくギルバートさん。」
笑顔で、手を握り返してくれた。良かった……。
「今後の事も話さないといけないし、長老に会いに行きませんか?」
それもそうだろうな。外と関わりを絶っている村に外の人間が入ったのだから、元気になって、ハイさよならってわけには行かない。
「こっちから頼みたいぐらいだ。ありがとう」
「それじゃあ、行きましょう。迷わないように付いて来て下さいね」
そういって二人で外に出たのだが……他の家が一軒も無い!
木で囲まれた丸い土地に、今出てきた小屋があるだけだ。
ここは村じゃなかったのか?
「村はどこだ?まさか、村から離れて君が一人暮らしをしている、なんて事も無いよな?
近くにあるのか?」
「……そんなに歩かないわ、行きましょう……。フィソラはここで待ってて」
『そうだな……。その方がいいだろう……』
アイリスの声が沈んでいた。何か悪い事を訊いただろうか……。
森の中を10分ほど進むと、木がまばらに生えた草原に出た。周りは森で囲まれ、中央の大きな泉から川が流れている。
いくつもの小屋が見えるが、すべてアイリスの家より大きい。俺とアイリスはその中で一番大きい小屋に入った。
なかには、一人のじいさんがいた。長い白髪と白いひげ、どちらもひざまで伸びている。
顔はしわだらけ。目も、しわに交じってわかりにくいほどだ。背も低く杖をついて立っていた。
黒いマダラの付いた白いローブに身を包んでいる。
威厳はあるが、お世辞にも強そうには見えない……。
「ウロボス様。さきほど、崖の下で外の者を助けました。いかがいたしましょう?」
アイリスが、ひざまずいている。やはりこの人偉いのか。
「ふむ。外の者か、そうじゃの〜。……アイリス、よければその者を泊めてやってくれまいか?」
重さなど微塵も感じさせない明るい調子で、とんでもないことを言った。
この人何を考えてるんだ?若い女の子の家に、見知らぬ男を居候させるのか?
「私はかまいません。でも、私の家に泊まったら……この人まで……」
アイリスの表情が暗くなり、黙った。よほど話したくない事があるのだろうか。
「アイリス。そのことを気にする必要は無い。その者と話がしたい。先に帰るのじゃ」
「……解りました。」
アイリスが出て行った。これから何を話すのだろうか
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