「どうして帰ってこなかったの!?無事だったならそう言ってよ!」
俺の胸に顔をうずめて、急に泣き出してしまった。さっきまで笑っていたんだから、泣くなよ……。
「俺だって帰ろうとしたけどな、あの長老!とんでもない奴だ!」
「ウロボス様が?どういうこと!?」
やっぱり不思議そうだな。まあ、長老も悪人じゃないんだろうけど……。
「助けてくれた後、怪我してるんだから動くなって俺をベッドに縛り付けて、見張りのドラゴンまでおいてんだぜ!
帰りたくても帰れねえよ!」
俺が今ここにいるのは、逃げたからだ。アイリスがここに向かったのも知っていた。
長老の声が聞こえていたからだ。
剣を探してから、ここまで全力疾走……。さすがに疲れた。
「あんな傷、唾付けとけば……」
「長老が正解ですよ!」
レグルスが遠くから大きな声を出す。
大声を出すぐらいなら、近くに来いよ……。
「ヴリトラのブレスを3回も受けて今動いているのが奇跡です!よく生きてましたね……」
「俺は昔から、悪運と生命力だけは強いんだ!
だからアイリス、俺が死ぬなんて老衰以外無い!安心していいぜ!」
俺を掴む手に力が入る。抱きしめてきた!
こんな時になんだが、なんて美味しい展開なんだ。
「しばらく、こうさせて……」
再び俺の胸に顔をうずめる。また泣き出した……。
「ああ……好きにしろよ……」
こんなにアイリスが泣くなんて。だいぶ心配かけちまったか……、悪かった。
もう、離れたりしない。ここで誓う。……振られたら別だが……
「俺の居ない間、アイリスを守ってくれてありがとよ!」
近くに居たフィソラに声をかけた。こんな事になって大変だったはずだ。
『言われるまでも無い。それが私の役目だ』
「もう大丈夫。ありがとう」
顔を上げたアイリスは、笑っていた。この方が断然いい!アイリスには笑顔が似合う。
残念な事に、俺から離れ、レグルスを見る。笑顔は消え、顔が変わった。
「ねえギルバート、早速だけど協力してくれる?」
協力しないなら、こんな所に来るはず無い。
「もちろんだ。レグルスの目を覚まさせればいいんだろ?任せとけ!
フィソラと俺の援護を頼む。余裕で勝てる位にしてくれ、どうせ無傷で捕らえるとか無茶考えてんだろ?」
「もちろん!そうしないと、意味が無いのよ!」
やっぱり……、優しい。組んだら、苦労しそうだ!
覚悟しておこう!
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