「ねえレグルス!出てきて!いるんでしょ!」

洞窟に着いた。きっと中にいるはず。

「どうしたんだい?そんな姿で!入りなよ。お茶でも入れるから」

奥から出てきたレグルスは、いつもと変わらない姿。でも………

「イスはないけど、そこに座ってなよ。すぐに……」

「ねえ………、シリアを助けたギルバートは……ここにいるの?」

少しの沈黙………。

「……気づいたんだね……いつから?」

……違うと、言って欲しかった。

『私が見ていた。あの夜、燃えている家と、イドロットの家へと向かうあなたをな。』

「その後お風呂に入りに行って……帰りにイドロットの家を見たら……。

フーリーの事は、さっき村で知ったの。だったら、ギルバートが守ったのはシリアって事よね……」

「僕だって確信したのは?」

「足跡を見つけたの、エンシェントドラゴンの。いいえ、姿の同じヴァイスドラゴンの足跡……」

「消したと思ってたのにな………。

……ギルバートさんの事だけど、彼はここにいない。彼は………」

ギルバートの行き先……ここに捕まっているか、もしくは

「谷から落ちて死亡………間違いないわよね」

それ以外だったら彼は戻ってくるに決まってる。あの山から落ちても無事だったんだから。

「…………」

レグルスが、暗い顔で黙った。私の頬を涙が伝う。

叫ばずには居られなかった!

「どうして殺したのよ!私達の仲間じゃなかったの!」

『落ち着けアイリス。覚悟は……出来ていただろう……』

覚悟も、想像もしてたけど……現実は悲しすぎた。

私が止められなかったから!あの時真実を伝えなかったから!何より、私のせいで巻き込まれたから!

私が彼を殺したようなものじゃない!私が……

「……彼は、………シリアをかばって谷に落ちたんだ。

シリアを殺す気もなかったから、弱いブレスだったんだけど、彼はその前にふらふらになってて。

そのまま、……バランスを崩して谷に…………僕の責任だよ」

レグルスも泣いていた。辛そうに。

「ギルバートは、……何か言ってた?」

泣きそうな私の声。

「こんな事やめて、君を幸せにしてくれって……。

でも……僕は止まれない。あいつら……君を襲う気だったんだ」

「昨日フーリーも襲ったんでしょ。

もう、私達に危害を加える人は居ないわ!もういいでしょ!」

お願い……もう止めて……。

「まだだよ……仕上げは残ってるんだ。村人が僕らを嫌っている限り、誰かが同じ事をする……」

「どうしても続ける気……?こんなに頼んでも……駄目なの?」

お願い。これで駄目だったら、私……

「……ごめん……君のためなんだ。こうすれば、もう……誰も僕たちに逆らわない

君には、わかって欲しい……」

これしかないのね

「だったら、力づくでも止めるわ!私だって戦える!」

彼の雰囲気が変わった。……怖い……。

「君には無理だよ……」

初めて聞く、冷たい声。今まで一度も、こんな冷たそうな彼……。

「君は、こんな風に心を殺せない。僕には勝てないよ」

「心を殺せないから、私はあなたと戦うの」

私は負けない。

彼が好きだから。

だからこそ、私がレグルスを止める。

「フィソラ!力を貸して!」

「ヴリトラ!頼むよ!」

私の指輪、そしてレグルスの本が光り、白と黒、二つの玉が出現した。

『交渉決裂か、残念だ。悪いが、その計画は止めさせてもらう!』

『止められるものなら止めてみよ!我らも己の信じた道を行くまでだ!』

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