「すぐに行くわ。ここで待ってて」

フィソラに呼びかけ、玄関の戸を開けた。私がこの家に戻った理由はひとつだけ。

タンスを開けた。中には、使う事はないと思っていた、白い魔法使いのマント。

取り出して、羽織った。こんな薄い布でも、魔法の力でそこそこの効果はあるはず……。

タンスの上から小さな箱を取った。中には私の思い出の品……。

この村が、まだ楽しかった頃の思い出。

「お母さん……」

行方不明のお母さんが買ってくれた……ドラゴンのブローチ。この村の工芸品。

今の私じゃ、絶対手に入らない物。防具を強くする効果がある。

きっと、……私を守ってくれる。

これが、私の戦う姿。レグルスも一緒に考えてくれた……。

この姿でレグルスと戦うなんて………皮肉な話だわ……。

ブローチを、マントの留め金に押し付けた。

魔力を素にして糸を生成、自動で服に固定された。

「用意できたわ!行くわよフィソラ!」

『いつでもいい。任せておけ!』

玄関の戸を開けた。もう村のことは気にしない。

私には、やらないといけない事がある!

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