「アイリス……。どうか泣かないでおくれ……」

ウロボス様は……いつもと変わらなかった。私にやさしく接してくれる。

私が来るとわかっていたみたいに、部屋の中央にイスが二つあった。

「座るといい。大事な話なんじゃろ」

「ありがとうございます」

イスに座った。でも、すぐにでも行かないといけない。

「ウロボス様、急な話で申し訳ありません。フィソラを強くする方法を教えて下さい」

フィソラは、エンシェントドラゴン……最強のドラゴンの1つ!今弱いのは、何か理由があるはず。

強くならないと、私達はレグルスを止められない!

「いいのじゃな?強いドラゴンは強い力。

そなたは若い。力の使い道を誤れば、正真正銘の悪魔となるぞ」

言われる事は分かっていた。今のレグルスも、力の使い道を誤った一人。

彼が悪魔とは思えないけど、あの日までの彼とは違ってしまった……

「覚悟は出来ています。お願いします!」

「想像はついておった。使わずに済む日……争いの無い日を願っておったが。

これでフィソラは強くなる……村に伝わる秘宝。4つの宝じゃ」

ウロボス様は、4つの小さな玉を差し出した。

紅い玉、氷のような玉、雲のような物が入った玉、最後に琥珀で出来た玉。

「指輪を見せてくれんか。説明が要るじゃろ?」

指につけている、指輪を見せた。ドラゴンの形、美しいデザイン。

ただ、ドラゴンの頭には円い穴が開いている。まるで何かをはめるみたい……。

「この穴に、玉を入れる。効果は約十分。今のフィソラなら1日1回が限度じゃ。

玉の説明もしなくてはならんな」

「お願いします」

「赤いのは紅炎玉、火属性に変わる。火を吐き、力が強くなる」

これは駄目!ヴリトラも無傷で止めないと意味がないわ!

「この氷の玉は不解氷、水属性に変わる。冷凍光線を吐き、体力が増える」

これも駄目!凍らせるなんて、レグルスもヴリトラも死んじゃうわ!

「この雲の入った玉は、白雲玉。風属性に変わる。かまいたちを飛ばし、動きが速くなる」

これいいかも知れない!かまいたちはともかく、素早くなったら色々できる。

「最後に、琥珀。まんまじゃな。地属性に変わり麻痺ブレスを吐く。守りが堅い」

これよ!これを探してたのよ!ようやく光が見えたわ!

麻痺ブレスなら、二人を無傷で止められる。守りを固めれば、戦いなれていないフィソラも、何とか戦える。

「どれにするかは、訊くまでもないようじゃな

その顔の方が、似合っておる。笑って行ってやった方が、彼も喜ぶじゃろう」

ウロボス様から琥珀を受け取った。これで、レグルスとヴリトラを傷つけずに二人を止められる!

これで、私の作戦が成り立つ。

今度は、私が助けてあげる。

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