−−−−−−5年程前、あの日−−−−−−−−−

「そのこに手を出すな、イドロット!シリア!」

「ぐへ!」

「来ないでよバカーーー!」

……勝っているのはアイリスだった。フィソラは隣に居た。鳴き声が応援に聞こえる。

迫るイドロットにパンチの嵐が降り注ぐ。シリアはそれを見て近づけないでいた。

「てめえ!それでも女か!うげ!」

「速くどこかに行って!変態!」

錯乱しているみたいだ。目を硬く閉じて、むちゃくちゃに手を振り回している。

一撃一撃は強いみたいで、当たるたびにイドロットが妙な声を上げる。

「覚えてろよ!次はこうはいかないからな!」

イドロットが走っていった。

「来ないでーーー!」

「アイリスさん。もう行っちゃいましたよ……」

「えっ!」

手を止めて周りを見ていた。僕以外に誰もいない。

「大丈夫?えっと……名前は?」

「僕はレグルスです。」

「大丈夫だった?レグルスさん」

太陽のような、綺麗に咲いた花のような。明るい笑顔で僕に手を差し伸べる。

「大丈夫です。ありがとう」

手をとり、立ち上がった。

思えば、この頃からだった……この笑顔で……。

「アイリスさんですよね。あなたこそ大丈夫でしたか?」

実際に彼らと戦ったのは彼女。僕は守ってもらっただけ……

「私は大丈夫……私たちこれからこんな日々なのかしら……」

さっきまで笑顔だった顔が急に陰る。見るに耐えない。

「大丈夫ですよ。僕が何とかして見せます」

見栄を張っちゃったんだよな………。

「本当!よろしくね!」

笑顔で、信じてくれた。

さっき僕が負けていた事なんて、気にしていないかのように。

「必ず、僕が何とかするよ!……待ってて」

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