「ヴリトラ!」

目の前に黒い玉が出現した。徐々に色が消え、ヴリトラが見えてくる。

『やはり、こうなったか。本当によいのだな。

友の願い、そして恋人の願いを裏切ってしまうが………』

「ヴリトラ。僕がやめても君は続ける気なんだろ?」

『…………』

パートナーなんだ。それぐらい気づくよ。

「友の頼みは自分の生き方じゃない。あくまでも頼みだよ。

それに、この方法なら一番早くアイリスが幸せになる。彼女が幸せになればそれでいいんだ」

『だがレグルス。そなたの幸せはどこにあるというのだ。ここからは我に任せろ!』

ヴリトラは本気だ。確かに僕の幸せを考えるならヴリトラに任せる方がいい。

こんな方法で村を平和にしても、僕は孤独になるだけだ……。

でも、ヴリトラ一人に辛い事を押し付けたりしたくない!

「僕はどうなってもいいんだ……。君にだって本当は、こんな事させたくない。

呼び出して勝手かも知れないけど……帰ってもいいんだよ……」

頬を何かが流れた。

『我はそなたのパートナー。共に歩む者だ。』

力強く、宣言してくれた。

「ありがとうヴリトラ」

もう一筋、流れた。

これで三回目……心を殺した。

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