まったく、さすがに死ぬよな………この谷に落ちたら……。

まだ死にたくねえな……。

あきらめて、目をつぶった。あきらめざるを得なかった………。もう体も動かない。

傷も無いのに、体中が痛い。

「ギルバートさん!」

急に落下が止まった!レグルスが俺の手を掴んでいた。

崖に寝転がり、手を差し出している。

今にも落ちそうだ!

「放せ!おまえまで落ちるぞ!」

「無理ですよ!あなたを見捨てるなんて!」

やっぱりいい奴だよ………。アイリスの目に狂いは無いな……。

さっきまでのは、きっと血迷っただけだ………。

「シリアは逃げたか?」

「ええ!逃げちゃいましたよ。あなたが邪魔をするから……」

「俺の勝ちだな………。こんな事止めて、アイリスを幸せにしてやってくれ………

じゃあな……」
手を振り解いた。俺は落ちていった。レグルスの驚いた顔が見える。

レグルスが死んだら……アイリスが哀しむからな………

「ヴリトラ!彼を!早く!」

『……無理だ………。我はまだ、あまり速くは飛べぬ………』

「ギルバートさん………僕は、その頼みは聞けません。

でも僕のやり方なら、アイリスは必ず幸せになります」

それだけ聞こえた……。

落ちている

俺は、友達一人止められないまま死ぬのか?

好きな人を哀しませて死んでいくのか?

幸せにする前に死ぬのか!?

くそ!俺にもう一度チャンスをくれ!

俺は、まだ死ねない!

俺の意思とは関係なしに……落下は止まらない……

落ちていく……

落ちていく……

落ちていく……
「スカイ!」
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