「すいませんギルバートさん………その人を渡してください!」
無表情のままだ。感情を殺しているようにも見える。
「浮気か!そんな奴にはアイリスを任せ………」
「誰がそんな女と!」
レグルスが怒鳴った。無表情な顔から、怒りがにじみ出ている。
何とか今のジョークで丸く治めたかった。
「僕は、村に革命を起こします……まずはあの三人です。そこを退いてください」
また静かに、だが、とんでもないことを言った。
「抑えろレグルス!家が燃やされて辛いのは分かる。でもやったのはあの三人だけだ!
そんなバカな考えは捨てろ!」
村人全員に仕返しをする必要は無いはずだ!
「この事と、家が燃えたことはあまり関係ないんです。邪魔をするなら……あなたを倒します」
「悪いなレグルス。俺もさっきこの女と約束しちまってな。俺が守れば、もうアイリスには手を出さないとさ!」
「そんな約束……口では何とでも言えます……。信じられません」
『我らには手を出す気だろう!この女が今まで何をしてきたか知らぬから、そのような戯言が信じられるのだ!』
「その通りだヴリトラ。ギルバートさん、今までその女には色々されています。
今更信じろというのが無理な話ですよ」
「ごめんなさい。今度こそもう何もしないわ!だからお願い……」
シリアが、泣きながら叫んだ。レグルスの言う事も分かる。だが、俺には、本当に思える………。
「寝てなよ」
ヴリトラのブレスが、シリアに向けて伸びる。だが、
「止めろ、レグルス!罪を重ねるな!」
間に入った。体中に切り裂かれるような痛みが走る。
「ギルバートさん。あなたを傷つける気はありません。退いてください!」
さすがに動揺したか。声があわてている。
「やだね!俺はしつこいんだ」
くそ。こんな展開は予想外だ……。普通の村人なら、素手で勝てたのにな。
剣がないとどうしようもない……このまま……楯になるしか……。
『どいてくれ!ギルバート殿!』
ヴリトラが、俺に当たらないよう角度を変えてブレスを吐いた。さっきのダメージでろくに動けないが……。
「この!…………撃つな!」
またブレスを受けた。はっきり言って、こいつにここまでする義理はない!
だが、守り通せば、きっと………アイリスは、今より少し幸せに暮らせるんだ!
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