ギルバートがケーキと戦っている頃。とある小屋。
「あいつらお荷物の癖して、俺にたてつきやがって!」
座ったまま、自らの寝室で独り言を話す男。泉にいた三人のリーダー格。イドロットだ。
「まあ、いいさ。行くところも無いからな、あれで確実に一人追い出した。残るは悪魔とよそ者か。
まずはあの悪魔だ。あいつを追い出せば、よそ者も消える。
今日来たばかりで、散々俺に盾突きやがって!目障りなんだよ!」
ニヤニヤと笑みをたたえている。……嫌な笑いだ。
「どうやって追い出そうか?」
立ち上がり、部屋をうろつき始めた。
「そうだな。手始めにあの化け物のように家を燃やすか。俺のドラゴンを貸せば、フーリーにもそれぐらいできるはずだ。
次は……、フィソラを捕まえて痛めつけよう。エンシェントドラゴンってのは一人じゃかなり弱いらしいしな。
召喚も出来ない主人を恨むんだな。あの悪魔の泣き叫ぶ顔が眼に浮かぶぜ!いい気味だ!」
残忍な笑みを浮かべる。アイリスもレグルスも、直接こいつに仕返しをした事はない。
すべて言葉で返すか、じっと耐えてきた。
「あの男は……ただ追放じゃ面白くない……。そういえば、アイリスを守るとか言ってるそうだな……
予定変更だ。先に生け捕りにして、アイリスの泣き顔をたっぷりと見せてやろう。
剣だって寝込みを襲えば、怖くないしな!
自分の無力を思い知るといい。クク…ハハハハハ!
笑いが止まらねえなぁ、ハハハ……きっとこの村始まって以来の、楽しいショーになるぜ!ハハハハハ」
高らかに笑い続けた。アイリスとレグルスに手を出しているのは実質あの三人だ。
あとの村人は陰口のみ。仲良くする気もないが、露骨な嫌がらせはしていない。
突然笑い声が止まった。濃い紫色の光が彼を捉える。外傷は無い。だが、そのまま床に倒れ気を失う。
白目をむき、恐怖にゆがんだ顔で………、倒れる瞬間に何を見たのか………。
その部屋に、数体の使い魔が入ってきた。
小さな、小悪魔のような姿だった。
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